ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
パーフィットの分離脳とは
パーフィットの分離脳とは、イギリスの哲学者であるデレク・パーフィットによって提唱された、自分自身とは何かを問う思考実験です。
テクノロジーが発展し、完全な脳移植とクローンの技術が確立したとします。
そこで、あなたの脳を取り出して、2つに切り分け、それぞれをクローンの体に移植します。
2人のクローンが目覚めると2人ともがあなたの記憶を持っており、あなたの本来とるべき行動をとりました。
どちらが本当のあなたなのでしょうか?
それとも半分になったことで、あなたという存在は消えてしまったのでしょうか?
それとも両方とも本当のあなただと言えるのでしょうか?
どの答えを選択しても、いまいち納得できないような気がします。
ちなみに、以下の記事で紹介しているスワンプマンも、こうしたアイデンティティに関する問題の1つです。
還元主義の考え方
人間の心を分析する際の哲学的な立場として、還元主義と非還元主義があります。
還元主義とは、心的な存在は全て物質に落とし込めると考える立場です。
この立場の人は、人格は脳や遺伝子などの物理的な要素として存在すると考えています。
還元主義の立場で考えると、そもそも時間とともに人の細胞は入れ替わり、考え方も移り行くものなので、常に同一の人格というものは存在しません。
そのため、元の人間と2人のクローンが同一の人格かどうかという問い自体が重要でなくなります。
よって、この思考実験自体が無意味な問いであり、強いて答えるならば、2人のクローンはどちらも元の人格と同一だということになります。
非還元主義の考え方
一方、非還元主義とは、心は物質だけでなく、何か「他の要素の集合」で形成されると考える立場です。
この立場では、原子レベルで全く同じクローンが存在しても、物質を超えた「何か」でそれらは区別され、別人であるということになります。
非還元主義の立場で考えると、分離した脳のクローンでできた2つの人格は、どちらも元の人格と心的な連続性を持ちます。
そのため、同一の人格であるかどうかの答えは出ませんが、少なくとも2人のクローンは、心的な連続性を持っていると言えます。
以下記事で紹介しているテセウスの船も、自己同一性に関する思考実験の1つです。
日常会話での使用方法
「俺が2人になって1日交代で暮らせたら楽でいいのになー」
「パーフィットの分離脳だね。自分がいなくなってしまうかもよ」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。