ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
神の存在証明とは
神の存在証明とは、神様が実在することを証明するための試みを指します。

代表的なものとして、以下の3種類の方法があります。
①目的論的証明(自然神学的証明)
②本体論的証明(存在論的証明)
③宇宙論的証明
中世以前は、人々はキリスト教を当然のように信じ込んでおり、神の存在は自明なこととされていました。
しかし、『神学大全』の著者であるトマス・アクィナスは、神を無批判に信じることはせず、神でさえも存在の論証が可能だという立場を取りました。
それでは、3種類の論証の方法について見ていきたいと思います。
目的論的証明
目的論的証明では、「この世界は自然に作られたにしては緻密で精巧すぎる」という考えを基にして、人知を超えた神がこの世界を作ったはずだ、という主張により証明を行います。
この世界では、厳密な数学に基づく物理法則が成り立っており、自然に発生したというのは無理があり、何者かの意図を感じずにはいられません。

その「何者か」こそが神であるというのが目的論的証明の立場を取る者の主張です。
この世界は「知的な何か」が作ったとする、インテリジェント・デザイン説は、まさにこうした思考のもと生まれた考え方でしょう。
また、この世界はプログラムによって仕組まれた仮想世界だとする、シミュレーション仮説も、類似の考えだと言えます。
本体論的証明
本体論的証明は、中世に行われた詭弁のような証明方法です。
神は完全な存在であり、あらゆる肯定的な属性を持っているとします。
例えば、「空を飛べる」や「物を浮かせられる」は肯定的な属性であり、「空を飛べない」や「物を浮かせられない」は否定的な属性です。
神は全ての肯定的な属性を持っているため、空も飛べるし、物も浮かせられることになります。
ここで、「実在する」というのも肯定的な属性であると言えます。
神は完全な存在なので、「実在する」という属性も含んでいなければならず、神が実在することが証明できる、というのが本体論的証明です。
これには明らかな論理の飛躍が存在し、後にイマヌエル・カントにも批判されています。
宇宙論的証明
宇宙論的証明は、この世の全ての結果には原因があるという考えを基にした主張です。
全ての出来事に原因があるということは、その原因にも何か原因があるということになります。
原因が無限に続くことはあり得ないので、そうやって因果関係を辿っていくと、最終的にはこの宇宙を誕生させた原因に行き着くことになります。
この宇宙の始まりの原因こそが神であるとするのが、宇宙論的証明の立場です。
このように、昔から人々は様々な方法で神の存在を証明しようとしてきました。
しかし、逆の考え方としては、全知全能の神の存在を仮定すると逆説が生じてしまうという、全知全能のパラドックスもあります。
神が実在するかはまだ誰にもわかりません。
日常会話での使用方法
「神よ、実在するならこの腹痛を止めてくれ」
「実在してもそんなしょーもないことに力を使わないだろ」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。