一人では「少し危ないかも」と思っていた案が、皆で話すうちに「やってみよう」に変わる。リスキーシフトは、集団の議論の前後で、リスクへの判断がどう動くかを考える言葉です。人が集まれば必ず無謀になる、という意味ではありません。
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リスキーシフトは、リスクの高い方向への変化
リスキーシフトとは、集団での議論などを通して、個人の判断よりリスクを取る方向へ判断が変化することです。「大勢の中で過激な発言に従う」という話だけでなく、議論前と議論後の選択の違いに注目します。
反対に、判断が慎重な方向へ動く場合はコーシャスシフトと呼ばれます。会議で何も決まらなかったことだけで、慎重な方向へ判断が変化したと分かるわけではありません。
集団極性化は、もとの方向が強まる話
関連する概念が集団極性化です。話し合う前に集団が傾いていた方向へ、態度や判断がさらに強まることを指します。リスクを取る方向だけに限りません。
マイヤーズとラムの1976年のレビューは、リスク以外の態度や判断も含めて、この現象を検討しています。説明には、他人との比較や、議論で得る情報の影響などが考えられています。
たとえば皆が同じ案の長所を一つずつ出せば、一人では知らなかった支持の理由が集まります。その一方で弱点がほとんど話題に出なければ、全体として案が強く見えるかもしれません。
架空の開発会議で、変化を見てみる
アプリの公開直前に、新しい対戦機能を入れるか相談するとします。一人ずつ考えた段階では、「面白そうだが、確認する時間が足りない」という意見が多かったとします。
会議で盛り上がる遊び方だけを話し続けると、「今入れなければ惜しい」と気持ちが変わるかもしれません。一方、通信の確認や不具合対応の負担を並べると、公開後へ回す判断が強まるかもしれません。
これは説明用の場面です。判断が変わったこと自体が悪いのではなく、どんな情報によって、どの方向へ変わったかを見たいのです。新しい情報が妥当なら、議論前と違う判断になることも大切です。
議論の前に、一人ずつの判断を残す
- 先に各自で、選ぶ案とその理由を書いておく。
- よい結果だけでなく、失敗した場合の影響を具体的に挙げる。
- 実現に必要な作業と、確認する時間を見積もる。
- 議論後の判断が変わったなら、新しく分かった理由を残す。
最初の意見を固定するためではありません。声の大きい人の発言を聞く前に、自分の考えを残すと、議論で何が加わったかを振り返れます。
反対意見は、人格評価にしない
リスクを挙げる人を「消極的」、挑戦したい人を「無責任」と呼ぶと、情報を出しづらくなります。「失敗するとどこに影響するか」「小さく試せる方法はあるか」と、案の中身を話題にできます。
役割として弱点を検討する悪魔の代弁者を置くことも、一つの工夫です。反対する役割を持つことと、その人が案を嫌っていることは別です。
ネットの議論でも、人数と情報の種類を見る
同じ意見の人が集まる場では、似た情報が何度も共有されることがあります。人数が多く見えても、根拠は同じ一つの話かもしれません。オンラインで意見や反応が連鎖する話は、サイバーカスケードと呼ばれることもあります。
ただ、ある事件や選挙の結果を、リスキーシフトだけで説明することはできません。具体的な判断の変化を見るには、参加者の考えや、議論の内容を知る必要があります。
話し合いは、知らなかったことを共有できる機会です。結論の勢いだけでなく、理由と負担まで見えるようにする。それが、集団の力を判断に活かす出発点になります。
本音と集団の判断のずれはアビリーンのパラドックス、結果から過去の判断を見てしまう話は後知恵バイアスでも紹介しています。
