功利の怪物:女性は胸を揉ませるべき?(知的な小話23)

功利の怪物は、功利主義という倫理学の理論を批判するために用いられる思考実験です。

この記事では、功利主義の基本原理を解説し、功利の怪物が示す倫理的な問題について詳しく解説します。

さらに、現実の事例を用いて、功利主義の限界とその対策について考察します。

功利主義とは

功利主義は、イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムとジョン・スチュアート・ミルによって提唱された倫理学の一派です。

功利主義は、「最大多数の最大幸福」を目指すべきだと主張します。

つまり、ある行為が善か悪かを判断する際には、その行為がもたらす幸福と苦しみを総量で評価し、最終的に幸福が最大化される行為を選択すべきだという考え方です。

功利の怪物とは

功利の怪物とは、最大多数の最大幸福を追求する功利主義を批判するために使用される例です。

イギリスの哲学者であるジェレミー・ベンサムは、社会全体の幸福の総量を最大とする行為が正しいと考える功利主義を唱えました。

1人の作業員を犠牲にして、5人の作業員を救う行為が正しいかを問う有名なトロッコ問題では、功利主義者は迷うことなく1人の作業員を殺し、5人を救うことになります。(1人が生き残る幸福度より、5人が生き残る幸福度の方が大きいため)

トロッコ問題:究極の選択?(知的な小話31)


また、功利主義では、社会全体の幸福量を重視するため、3人の人間が「+3」の幸せを感じることよりも、1人の人間が「+10」の幸せを感じることの方が、優先されます。


こうした性質から、時に功利主義は誤った結論を導き出すことがあります。

例えば、人間がケーキを食べると+1の幸福を感じることができるとした時に、ケーキを食べて+1000の幸福を感じることができる「功利の怪物」 という存在を仮定します。

ケーキが1つしかなければ、最大の幸福を得るために、それを「功利の怪物」に与えるべきです。

しかし、ケーキが複数ある場合も、社会全体の総幸福量を増大させるために、全て「功利の怪物」に与えるべきだということになります。

つまり、「功利の怪物」が通常の人間よりも多くの幸福を得ている限り、功利主義の下では社会全体の総幸福量は最大となるものの、大多数の人間が不幸になってしまうのです。

功利の怪物が示す倫理的問題

功利の怪物の思考実験は、功利主義が個人の権利や尊厳を無視する可能性があることを示しています。

もし怪物の幸福が最大化されることが最善の結果であるとすれば、他の人々の幸福や権利は二の次になってしまいます。これは、公平性や正義に反すると考えられます。

現実の事例と功利主義の限界

現実の社会でも、功利主義の考え方が倫理的な問題を引き起こすことがあります。

例えば、経済成長を優先する政策が、環境破壊や貧富の格差を拡大させることがある。

このような場合、社会全体の幸福が最大化されているように見える一方で、一部の人々や環境が犠牲になってしまうことが指摘されます。

これは、功利主義が個別の利益や権利を軽視しがちであることが原因とされています。

功利主義の対策

功利主義の限界を克服するためには、個人の権利や尊厳を尊重する考え方を取り入れることが重要です。

例えば、ルール功利主義は、社会全体の幸福を最大化するルールを制定し、そのルールに従って行動することを主張します。

これにより、個々のケースでの幸福の最大化だけでなく、公平性や正義の観点からも評価されるようになります。

また、倫理学の他の理論と組み合わせることで、功利主義の問題点を補完することができます。

デオントロジー(義務論)やケア・エシックス(関係倫理学)は、個人の権利や尊厳を重視する考え方であり、これらの理論を参考にすることで、功利主義が抱える倫理的な問題に対処できる可能性があります。

功利主義とおっぱい

ここでは、功利主義の考え方を利用して、「女性は男性におっぱいを触らせてあげるべきだ」ということを論理的に説明したいと思います。


基本的に、女性は好意を持っていない男性に胸を触られて良い気分はしないでしょう。

ですが、胸を揉まれる行為で、怪我をしたり、痛みを伴ったりすることはありません。

ここで、女性が胸を揉まれて嫌な気分になる不幸度をー1ポイントとします。

一方、男性は常日頃から女性のおっぱいを触りたいと考えています。

おっぱいを触ることができれば、その瞬間はもちろん、その後1週間は幸せな気持ちが続くでしょう。

おっぱいを揉んだ時に男性は、控えめに見積もっても、女性が嫌な気分になる不幸度より、倍の幸福度を感じることができるでしょう。

よって、男性が胸を揉んで嬉しい気分になる幸福度を+2ポイントとします。

お気づきの方もいるかもしれませんが、女性が男性におっぱいを揉ませる行為によって、社会全体の総幸福量は増大しています。

つまり、おっぱいを揉ませることは社会全体の幸福に貢献する良い行為ということになります。

逆に言えば、胸を揉ませない女性は、社会全体の幸福度を上げる機会を奪っていることになり、悪だと言えるのです。

女性のみなさんは、これを機にどんどんおっぱいを触らせてあげてみてはいかがでしょうか。


・・・

ここでは、男性を功利の怪物に見立てて、無茶苦茶な理論をそれっぽく説明してみました。

こうした暴論が成立してしまうため、単純な幸福量だけで行為の正当性を判断する功利主義は、誤りだと言ってもいいかもしれません。

まとめ

功利の怪物は、功利主義の倫理的な問題を浮き彫りにする思考実験です。

この記事では、功利主義の基本原理と功利の怪物が示す問題点を解説しました。

現実の事例を通じて、功利主義が個人の権利や尊厳を軽視する限界を明らかにし、それに対する対策を提案しました。

倫理学の理論は、さまざまな視点を組み合わせることで、より理想的な社会を目指す指針となることができるでしょう。

本サイトで紹介している用語一覧は以下です。

One Reply to “功利の怪物:女性は胸を揉ませるべき?(知的な小話23)”

  1. 引用元で既にケーキという十分なたとえがあるのにちょっとひとつまみ男性蔑視をいれるのを忘れない
    なぜならわたしが気持ちいいから
    これも功利の怪物といえよう

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