ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
神の見えざる手とは
神の見えざる手とは、イギリスの経済学者アダム・スミスによる、市場経済において各個人が自己の利益を自由に追求すれば、結果として社会全体に適切な資源配分がなされるという考え方です。
こうした需要と供給が自然に調節される価格メカニズムのことを、著書『国富論』の中で「見えざる手」と呼んだことによります。
例えば、1個100円の価値のおにぎりがあるとします。
このおにぎりの値段が300円になれば誰も買わなくなります。
そうなると、販売者はおにぎりを売るために徐々に価格を下げていき、最終的には適正価格の100円に落ち着きます。
また、もしおにぎりが50円になるようなことがあれば買いたい人が殺到するため、価格が上がり、再び100円に落ち着くことになるのです。
こうした需要と供給に関するメカニズムは「価格の自動調節機能」とも呼ばれています。
ウーバーイーツ(Uber Eats)が成功した理由
ウーバーイーツというサービスをご存知でしょうか。
ウーバーイーツとは、ウーバー社によって提供される、食事を注文すれば、その商品を出前のように指定の場所まで運んできてくれるというサービスです。
これだけでは普通のフードデリバリーサービスですが、ウーバーイーツの最大の特徴は、ウーバー社は料理も作らず、配達も行わないという点です。
食事はその他の飲食店(例えばマクドナルドやガストなど)が用意し、配達は一般人が行います。
ウーバー社は、飲食店から手数料を得つつ、配達を行った一般人に報酬を支払う仕組みを構築し、運営しているだけです。
ウーバー社は、この仕組みを通じて大きな利益を得ています。
都会に住んでいれば、「Uber Eats」と書かれた緑色の箱を背負って、自転車やバイクを乗り回している人を一度は見たことがあるでしょう。
配達員は、街中で配達の依頼を待ち、依頼を受けて料理を運ぶごとに報酬を得ることができます。
いつでも自分が好きな時にだけ働くことができるため、お小遣い稼ぎに非常に人気のアルバイトとなっています。
一見素晴らしい仕組みですが、配達員の人員を丁度良く保つのは非常に難しく思えます。
配達員には誰でも簡単になることができるため、配達員が増えすぎてしまうこともあるでしょうし、逆に時間帯によっては配達員が不足してしまうこともあるでしょう。
配達員が増えすぎると、なかなか配達の依頼が回ってこず、儲からないバイトになってしまいますし、逆に少なすぎると、配達の速度が低下し、注文された料理を迅速に届けることができなくなります。
ウーバー社はこうした課題を「神の見えざる手」を使って解決しています。
配達員が配達数と比較して過剰な場合は、配達員に支払う報酬を通常より少なくしています。
そうすると「この報酬額では働きたくない」と感じた配達員が働くのを止め、配達員の総数を減らすことができます。
逆に、配達員が不足している場合は、配達員に支払う報酬を通常より多くすることで、「この額なら働きたい」と思った配達員が配達を始め、総数を増やすことができるのです。
このように、報酬額を変動させることで需要と供給(ここでは配達数と配達員数)のバランスを見事に操っているのです。
また、報酬額を変えなくても、人員が過剰な場合は配達員にとって儲かりづらい環境になるため、ある程度自動的に配達員が減りますし、逆に人員が過少な場合は、儲けやすくなって配達員が増えるでしょう。
こうしてウーバー社は、見えざる手で配達員の数を自動的にコントロールすることで、安定したフードデリバリーサービスを提供しているのです。
この仕組みを考えた人は天才ですね。
日常会話での使用方法
「嵐のコンサートチケット高すぎだろ…」
「神の見えざる手によるものだから仕方ないね」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。