プロスペクト理論:人が投資に失敗する理由は?(知的な小話165)

ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。

プロスペクト理論とは

プロスペクト理論とは、アメリカの心理学者であるダニエル・カールマンとエイモス・トベルスキーによって発表された意思決定に際する理論で、人は利益を得ることよりも損失を回避することを優先したがるという心理を表します。

プロスペクト理論を直感的に理解するために、以下の2つの質問の答えを考えてみてください。

質問1:
あなたは2つの選択肢のうち、どちらを選びますか。

選択肢A:必ず100万円が貰える
選択肢B:50%の確率で200万円が貰える

質問2:
あなたには200万円の借金があります。
あなたは2つの選択肢のうち、どちらを選びますか。

選択肢A:必ず100万円が貰え、残りの借金が100万円になる
選択肢B:50%の確率で200万円が貰え、残りの借金が0円になる

あなたは、それぞれの質問でどのように答えましたか?

実際に行われた調査では、多くの方が質問1では選択肢Aを、質問2では選択肢Bを選びました。

質問1と質問2を見比べてみればわかりますが、質問2には前提として借金があるということを除いて、2つの選択肢は全く同じです。

しかし、通常なら確実に100万円を貰おうとする人でも、借金がある場合は多少のリスクを負ってでも借金をゼロにできる可能性がある勝負をしようとするという結果になりました。

これは、人が損失そのものを回避しようという性質を持っているためです。

人が投資に失敗する理由

資産運用として有効な選択肢であるはずの株式投資で多くの人が失敗してしまうのも、プロスペクト理論によって、過剰に損失を回避しようとしてしまうためです。

当たり前のことですが、株式投資では、安い時に買って高い時に売れば儲かって、高い時に買って安い時に売れば損をします。

しかし、プロスペクト理論に則ると、人は値上がりした時には株を売るまいと考え、値下がりした時に売りたいと考えてしまいます。

株の値段が10%上がった時と、10%下がった時の投資家の心理を考えてみます。

株が10%値上がりした場合、人は「これぐらいの儲けでは足りない」「まだまだ儲けたい」と感じ、株を保有し続けようとします。

人は利益を損失よりも過小評価するため、少々の値上がりでは満足しません。

一方、株が10%値下がりした場合、人は「これ以上下がったらどうしよう」「損している状況に耐えられない」と感じ、株を手放そうとします。

同じ10%の値動きでも、プロスペクト理論によって、損失の方が利益よりも過大に評価されるため、株を保有し続けるのが難しくなります。

そのため、「安く買って高く売る」という頭では分かりきっている当たり前のことが、実際の投資ではできなくなってしまい、値下がりした株を売るという真逆の行動に繋がってしまうのです。

日常会話での使用方法

「株買ったら下がってきちゃった。売った方がいいのかな」

「向いてないから止めた方がいいよ」



本サイトで紹介している用語一覧は以下です。



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