ハンスの馬:馬が足し算できるって本当?(知的な小話166)

ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。

ハンスの馬とは

ハンスの馬とは、本当は計算ができない馬を計算ができる馬だと思い込んでしまったという実話から生まれた、先入観や思い込みといったバイアスに陥っている状態を指す比喩です。

1900年頃のドイツで、簡単な計算ができる馬として、ハンスという馬が一躍有名になりました。

ハンスは黒板に「3-1=?」といった計算式を書くと、その答えの数だけ足で地面を叩いて回答をします。

実際に飼い主が書いた問題の回答を、大勢の前でハンスが見事に答えたので、周囲の人も馬でも教育さえすれば計算を覚えられると考えました。


しかし、追加で行われた実験で、実はハンスは計算をして回答をしている訳ではなく、飼い主の反応を見て正しい回答を感じ取っているだけだということが明らかになりました。

追加の実験は、飼い主が問題を出した後、ハンスの見えないところに移動するというものです。

すると、ハンスは飼い主が見えていた場合では89%程度の正解率をだったにも関わらず、飼い主が見えなくなった途端、6%程度しか正解できなくなってしまったのです。

このことからハンスは、答えを知っている飼い主が、無意識に頷いたり眉をひそめたりするのを見て、正しい答えを推測していただけであったことが明らかになりました。

飼い主も、ハンスにこっそり答えを伝えて他の人を騙そうとしていたわけではなく、本当にハンスが計算ができると思い込んでしまっていたという点が非常に興味深いです。

これは人は自分の都合の良い情報を信じるという確証バイアスの一種です。

馬が計算することができるという印象的でセンセーショナルな結果に気を取られて、ハンスが別の情報から答えを推測していたという真実が見えなくなってしまったのです。

こうした思い込みによる誤解を、クレバー・ハンス効果とも呼びます。

こっくりさんはハンスの馬?

一昔前に流行った「こっくりさん」という遊びをご存知でしょうか。

こっくりさんは、狐の例を呼び出すための儀式で、五十音が書かれた紙と十円玉を用意し、数人の参加者の人差し指で十円玉を指し、力を抜きます。

そして、こっくりさんに対して質問をすると、十円玉が勝手に動いて、質問に対する回答をしてくれる、という遊びです。

誰も意識して動かそうとしていないにも関わらず、実際に十円玉が動き出すこともあるので非常に興味深いです。

しかし、デンマークの研究者によると、これもハンスの馬と同様、人の無意識の期待によって起きている現象であるとされています。

人はじっと動かないようにしようとしても、無意識にわずかに動いてしまうものです。

その無意識の動きに、「こう答えたら面白いんじゃないか」「自分だったらこう答えるな」といった参加者のわずかな意思が加わることで、まるで本当に狐の例が回答をしたかのような動きになってしまうのです。

日常会話での使用方法

「俺の飼ってる亀は賢いから人の気持ちがわかるんだぞ」

「それはハンスの馬だよ」



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