期待値と期待効用(宝くじを買うべき理由とは?)

皆さん、一度は宝くじを買ったことがあるのではないでしょうか?

どうせ当たらないだろうとは思いつつも、1等の数億円を手にした時のことを想像すると、わくわくして眠れなくなってしまいますよね。

しかし、少し数学を勉強したことがある人なら、宝くじは買った金額より、返ってくる金額の方が少ないことを知っています。

中には「宝くじを買う人は馬鹿だ」や「宝くじは貧乏人の税金だ」とさえ言う人もいます。

果たしてこうした批判的な意見は正しいのでしょうか?

ここでは、期待値と期待効用の2つの観点から宝くじを買うという行為の是非について考えてみようと思います。

宝くじの期待値はマイナス

以下の記事で詳しく説明していますが、期待値は簡単に言うと、ある行為に対するリターンの平均値です。

例えば、コインを投げて、表が出れば100円が貰えて、裏が出ると何も貰えない場合、このゲームの期待値は50円ということになります。

そして、宝くじを含むギャンブルには、還元率というものがあります。

還元率は、ある金額を賭けた時の期待値をパーセンテージにしたものです。

例えば、上記のコイン投げゲームの参加費が75円だった場合、75円賭けて平均50円戻ってくるため、以下の数式から還元率は67%となります。

(100+0)÷2÷75=0.66・・・


つまり、やればやるほど、自分の資金が67%に減っていくので、この勝負には参加しない方が良いということになります。

逆に、還元率が100%を超えていれば、やればやるほどお金が増えるので、勝負した方が良いということになります(そんなギャンブルはありませんが・・・)。

ちなみに、多くの有名なギャンブルの還元率は、以下の通りです。

ルーレット:97%
パチンコ:85%
競馬:75%
競艇:75%
宝くじ:45%


お気づきでしょうか?

宝くじの還元率は、他のギャンブルと比べて、かなり低めに設定されています。

この還元率の低さを根拠に、宝くじは買うべきでないと考える人が多いのです。

確かに、期待値と還元率を考えた場合、宝くじは買わない方が良さそうです。

期待値と期待効用は異なる

しかし、期待値をそのまま人間の行動に当てはめることはできません。

期待値は金額などの数字を計算することはできますが、人間の幸福度(≒効用)までは計算できません。

例えば、1杯100円のレモネードを飲むとします。

喉がカラカラの時に飲むこのレモネードは、100円以上の価値があるでしょう。

しかし、2杯、3杯と繰り返し飲むうちに、レモネードの金額は変わりませんが、レモネードから得られる効用は、どんどん減っていき、やがてその効用は100円分に満たなくなるでしょう。

これは、限界効用逓減(ていげん)の法則と呼ばれるものです。

他の例を挙げると、多くの人にとって、100億円を貰った時の喜びは、50億円を貰った時の喜びの倍ではありません。

金額は2倍ですが、100億円であろうと50億円であろうと、どちらも果てしなく大きい金額であり、同じぐらい嬉しいはずです。

このように、人間の得る喜びを測る際は、期待値ではなく、期待効用で考える必要があります。

期待効用は、支払う対価への負の感情に対する、得られる平均リターンの効用の大きさであると言うことができます。

宝くじの期待効用はプラス

では、期待値はマイナスであった宝くじでしたが、期待効用の観点から考えた場合、どうなるのでしょうか?

これは人によって違うという結論が正しいのですが、多くの人にとっては、期待効用はプラスになるのではないかと考えられます。

ここでは、1等が7億円の年末ジャンボ宝くじを買う場合を仮定してみます。

期待効用を計算するには、支払う対価への負の感情と、平均リターンの喜びを計算する必要があります。

年末ジャンボ宝くじは1枚300円なので、対価は300円を失った時の気持ちだということになります。

これはほぼゼロと言って良いでしょう。

たった300円で生活が変わることはないでしょうし、300円が財布から無くなっていても気付きすらしないかもしれません。

一方、平均リターンですが、1等の7億円が当たった時の効用は物凄いです。

普通の生活であれば一生働かなくて済みますし、大抵のやりたいことはできるでしょう。

年末ジャンボ宝くじの当選確率は2000万分の1なので、期待効用は7億円が当たった場合の2000万分の1の喜びということになります。

この300円という微々たる対価と、7億円を手にした効用の2000万分の1の大きさを比較し、効用の方が大きいのだと考えた場合、宝くじを購入する行為は合理的であると言えます。

期待値という側面だけを切り取って、宝くじを批判する人も多いですが、人間の行動を決める際には、期待効用という指標もあることを知っておいて損はないでしょう。

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