説明を丁寧にしようとして言葉を足したのに、何を言いたいのかわからなくなる。機能を増やしたのに、使い方が難しくなる。「複雑にするのは簡単、単純にするのは難しい」というメイヤーの法則は、そんな場面を考えるための言い回しです。
目次
単純にするには、何を残すかを選ぶ必要がある
情報を足すだけなら、思いついた順に並べられます。しかし、短くわかりやすくするには、目的を決め、重要なものを選び、順番を整える必要があります。単純にする難しさは、この選択にあります。
ここでいう法則は、複雑さから人の知能を測定する公式ではありません。長い説明が必要な話もありますし、短い言葉では条件が伝わらない場合もあります。賢い人は必ず短く話す、と人物評価に使うより、どうすれば相手が理解しやすいかを考える方が役立ちます。
最初に「何の話か」を伝える
聞く側は、説明がどこへ向かっているかわかると、後の情報を整理しやすくなります。結論から伝える方法は、そのための一つの工夫です。
例えば、架空のゲーム制作で、ヒントボタンを目立たせたいと提案する場面を考えます。
| 伝え方 | 説明の例 |
|---|---|
| 事情から始める | 最初の画面で何人かが止まり、ボタンを探していて、問題文の下にも余白があるので、配置を変えた方がよさそうです。 |
| 提案から始める | ヒントボタンを問題文の下に移したいです。初めて遊ぶ人が場所を探していたためで、空いている余白に置く案です。 |
後者は、最初に何を変えたいかがわかります。そのあとに理由や配置の案が続くので、相手は賛成するか、別の案を出すかを考えやすくなります。
ただ、物語や謎解きでは、先に結論を明かさない方が面白いこともあります。順序は目的に合わせて選ぶものです。提案を判断してもらう説明と、答えへたどり着く遊びは、同じ構成にする必要がありません。
言葉を削る前に、目的と相手を決める
「アプリについて説明する」だけでは、どこまで話すかが決まりません。インストール前の人に遊び方を伝えるのか、制作仲間に仕組みを共有するのか、問題が起きた人に操作を案内するのか。目的が違えば、必要な内容も違います。
遊びたい人には、何をするゲームで、何人で遊べて、どの端末に対応するかが役立つでしょう。作る人には、入力、処理、保存の仕組みが必要かもしれません。
相手がすでに知っていることも考えます。初めての人には例を一つ置き、詳しい人には条件の違いを先に伝える。同じ内容でも、入り口を変えられます。
削ってはいけない情報もある
短くすることだけを目標にすると、判断に必要な条件まで消してしまいます。「無料です」とだけ伝えても、どこに広告があるか、追加の購入があるかなど、使う前に知りたいことは残ります。
ボタンの言葉も同じです。「実行」より「結果を保存」の方が長くても、何が起きるかはわかりやすいでしょう。短いことと、理解しやすいことは別です。
削る候補は、同じ意味の繰り返しや、今の目的に関係しない説明です。残したいのは、次に何をすればよいか、何が起きるか、選ぶために必要な条件。必要なら見出しや表で整理し、詳しい説明へ進める形にします。
画面なら、最初の一手が見えるかを確かめる
使う人が最初に何をするかが決まっていない画面は、ボタンを減らしても迷わせることがあります。まず文章を入力するのか、部屋を作るのか、問題を選ぶのか。体験の流れを決めると、最初に見せるものを選びやすくなります。
例えば、遊ぶ前から全設定を並べる代わりに、開始に必要な選択と、あとから変更できる設定を分ける案があります。選択を隠し過ぎず、今必要なものを見つけやすくする工夫です。ゲームのルール説明の作り方でも、最初の一手から伝える方法を紹介しています。
初めて見る人に、どう理解したかを聞く
作り手は、書かなかった条件も知っています。だから、自分にわかる説明が、初めて見る人にもわかるとは限りません。
「わかりやすかった?」だけでなく、「何をするものだと思った?」「最初に何を押した?」「押すとどうなると思った?」と聞くと、相手の理解が見えます。答えを誘導せずに聞くことで、補う場所を見つけやすくなります。
単純にする作業は、ただ消す作業ではありません。必要な情報が、必要な場面で伝わる形を作ることです。迷ったら、相手に何を理解してほしいかへ戻ると、残すものを選びやすくなります。
