新しい勉強法を始めたら、次のテストで点数が上がった。これは、その方法が効いたからでしょうか。そうかもしれません。でも、テストの難易度や、勉強時間も変わっていたなら、順番だけでは原因を決められません。
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前後即因果の誤謬とは
前後即因果の誤謬は、「AのあとにBが起きた」ことから、「AがBを起こした」と結論づけてしまう誤りです。「ぜんごそくいんがのごびゅう」と読み、英語ではpost hoc ergo propter hocと呼ばれます。
前後関係が分かることと、原因が分かることは別です。この推論の説明は、Purdue大学の論理的誤謬の教材でも紹介されています。
原因となる出来事は、結果より前に起きていることが多い。だからといって、前に起きたことが全部原因になるわけではありません。朝に靴下を替え、そのあと試合に勝ったとしても、その順序だけでは靴下の効果を示せないのです。
雨男の話が、もっともらしくなる理由
友達が到着した直後に雨が降ると、「また君が来たからだ」と言いたくなります。一回の偶然でも、笑い話として記憶に残りやすい場面です。
けれど、晴れた日に同じ友達と会った回数は、数えているでしょうか。雨が降った日だけ印象に残れば、見ている出来事が偏ります。「会ったあと降った」は観察ですが、「その人が降らせた」は、そこから加えた説明です。
このように、考えに合う出来事へ目を向けやすい問題は、確証バイアスとも関わります。いつも雨だという主張を確かめたいなら、まず、会った日全体の中で雨の日がどれだけあったかを見る必要があります。
アプリの更新後に、利用が増えたら?
架空のアプリで、ボタンの色を変えた翌週、利用者が百人から二百人に増えたとします。「色を変えた効果だ」と報告したくなる数字です。
ところが、同じ週に次のことも起きていたら、どうでしょう。
- 紹介記事が公開された。
- 連休になり、遊ぶ時間が増えた。
- 計測方法を変更した。
- 色以外にも、使いにくかった操作を直した。
どの変化が関わったかを分けて考える必要があります。色を変えたあと利用が増えたこと自体は、次に調べる手がかりになります。でも、それだけで色の効果を決めると、別の原因を見落とします。
ほかの説明と、比較を用意する
原因を考えるときには、一つの説明を否定するだけでなく、違う説明なら何が見えるかを考えられます。
| 確認したいこと | 架空の例で調べる点 |
|---|---|
| ほかに何が変わったか | 紹介記事、休日、別の機能、計測の変更 |
| 変えていない場合はどうか | 同じ時期の比較対象でも利用が増えているか |
| 同じ条件で繰り返せるか | 一日だけの上下ではなく、何度も同じ傾向が見えるか |
| 説明する仕組みがあるか | ボタンが見つけやすくなり、操作が進んだか |
アプリなら、適切に利用者を分け、ほかの条件をそろえて二つの画面を比較する方法も考えられます。ただ、人数が少ないと偶然の上下も大きくなります。計測の定義や期間までそろえて、どの程度の違いかを見ます。
順番しかないから「無関係」とも言えない
この誤謬を知ると、「それは前後関係でしかない」と、すぐ議論を終わらせたくなるかもしれません。でも、順序だけで原因を証明できないことと、原因ではないと証明できたことも違います。
新しい方法が本当に役立った可能性は残ります。だからこそ、「ほかに変わったことは?」「比較したらどうなる?」と、次の問いを足します。疑うことを、調べることにつなげるのです。
何かがうまくいったときも、うまくいかなかったときも、印象に残る直前の出来事だけが原因とは限りません。「そのあと」と「そのせいで」を一度分けてみる。その小さな言い換えが、思い込みから検討へ進む入口になります。
