タイポグリセミアは、単語の文字の順番が一部入れ替わっていても、元の言葉を読み取れてしまうことを指す呼び名です。「この ぶんょしう は よめますか?」のような文章で知られています。
ただし、最初と最後の文字さえ合っていれば、どんな文章でも読めるという法則ではありません。この記事では、自分で試せる例と、読み取れる条件、よくある「ケンブリッジ大学の研究」という説明の注意点を紹介します。
目次
まずは短い文章で試してみる
次は、本記事のために作った文字入れ替えの例です。科学的な検査ではなく、読める感じと読みにくい感じを比べるための遊びです。
きょうは とょしかんで ほんを よみます。
あしたは こえうんで さぽんします。
元の文章を確認する
きょうは としょかんで ほんを よみます。
あしたは こうえんで さんぽします。
読めたとしても、一文字ずつの順番が無関係ということにはなりません。「図書館で本を読む」「公園で散歩する」という組み合わせを知っていることや、文章の流れも手がかりになります。
なぜ読める? 読みやすさを左右する条件
文字が入れ替わった文章の読みやすさは、単語の長さ、入れ替える文字の位置、もとの単語へのなじみ、前後の文脈などによって変わります。すべての単語を大きく崩した文章と、短い単語や助詞を残した文章では、読み取るための手がかりの量が違います。
ケンブリッジのMRC Cognition and Brain Sciences Unitの研究者Matt Davisによる解説も、「最初と最後さえ正しければよい」という説明を否定しています。隣り合う文字を入れ替える場合と、離れた位置へ動かす場合の違いなど、読みやすく見える文章には条件があると説明しています。
つまり、読み取れた例を一つ見ただけで「人は単語全体の形しか見ていない」と結論づけることはできません。文字についての情報も、文脈からの予測も考える必要があります。Matt Davisの解説で、元の英文と研究の説明を確認できます。
自分で例を作ると、違いがわかりやすい
- ふだん使う言葉を選ぶ。まずは「としょかん」「こうえん」のような、意味をよく知っている言葉を選びます。
- 一か所だけ入れ替える。内側の隣り合う文字を交換し、どの程度読みやすいか見ます。
- 文の中に置く。単語だけの場合と、「そこで何をするか」がわかる文の場合を比べます。
- 未知の言葉でも比べる。元の言葉を知らなければ、並べ直す候補も思いつきにくいことを確認できます。
たとえば「ほんを よむ」という前後の言葉があれば、少し崩れた「としょかん」を予測しやすいでしょう。一方、意味の知らない地名や製品名を崩すと、答えの候補を絞りにくくなります。これは説明のための例であり、読みやすさを数値で測定した結果ではありません。
「ケンブリッジ大学の研究」は本当?
インターネットで広まった文章には「ケンブリッジ大学の研究によると」という説明が添えられることがあります。しかしDavisの解説では、その流布した説明と実際の研究は分けて扱われています。大学名が付いているだけで、文章全体が研究によって証明されたと判断しないことが大切です。
研究の話として紹介するときは、著者、論文名、どんな文章や参加者で調べたのかを確認しましょう。このページの短い日本語例は、英語の研究結果を日本語で再現・検証したものではありません。
日本語の例で気をつけたいこと
日本語には漢字、ひらがな、カタカナがあり、ふだんは英語のようにすべての単語をスペースで区切りません。ひらがなだけで書き、区切りを入れた遊びの文章と、普段読む文章は見た目も手がかりも異なります。
例を紹介するときは「私は読めた」「この文章は読みやすい」と、見た例の範囲を意識してください。「誰でも読める」「日本語でも同じ仕組みが証明されている」と広げすぎないほうが、正確に伝わります。
謎解きやアプリの文章に生かすなら
文字の並びを手がかりにする遊びでは、読者が元の単語を知っているか、候補が一つに絞れるかを考えると、問題を作りやすくなります。答えが複数ありそうなら、文脈や別のヒントを添えてみましょう。
一方で、アプリのボタン、料金、注意事項など、誤読してほしくない文章は正しい表記にする必要があります。読者が頭の中で補ってしまうこともあるため、文章の校正では、流れとして読むだけでなく固有名詞や数字を個別に確認することも役立ちます。
言葉や見方を変える謎解きが好きな方は、作者が作った謎解き千本ノックもご覧ください。アプリの問題がすべて文字入れ替え問題というわけではありません。
よくある質問
読めないと能力が低いのでしょうか?
このページの例は能力を測る検査ではありません。言葉へのなじみや文章の作り方によって読みやすさが変わるため、読めたかどうかだけで知能や能力を判断できません。
誤字があっても気にしなくてよい?
読み取れる場合があることと、誤字のない文章が必要なことは別です。特に名前、日付、金額、操作の説明では、読み手の推測に頼らない表記が大切です。
参考情報
Matt Davis, Psycholinguistic evidence on scrambled letters in reading, MRC Cognition and Brain Sciences Unit。文字順が崩れた英文と、関連研究への説明を掲載しています。
作者について:Takeru Itoのプロフィール

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