あと8回で特典がもらえるカード。空欄が8個あるものと、10個のうち2個がすでに埋まっているものでは、どちらを完成させたくなるでしょうか。残りの回数は同じでも、「もう進んでいる」という見え方で、続ける気持ちが変わることがあります。
エンダウド・プログレス効果の意味
エンダウド・プログレス効果とは、目標へ向かう進捗を最初に与えられることで、課題がすでに始まっていると感じ、達成へ向けた努力や継続が増える現象です。ジョセフ・ヌネスとザヴィエ・ドレーズが、2006年の論文で報告しました。
endowedは「与えられた」、progressは「進捗」。単に「何かを始めると必ずやる気が出る」という一般法則ではなく、同じ残りの課題を、進捗のある状態として捉えることに注目します。ヌネスとドレーズの論文で、考え方と実験が紹介されています。
洗車のスタンプカードで比べた実験
研究では、洗車の利用者へ異なるカードが渡されました。一方は8個のスタンプで特典がもらえる空のカード。もう一方は10個で特典がもらえ、最初から2個のスタンプが押されているカードです。
| カード | 最初の状態 | 残りの利用回数 | 研究での完成率 |
|---|---|---|---|
| 8個のカード | 0/8個 | 8回 | 19% |
| 10個のカード | 2/10個 | 8回 | 34% |
必要な追加の利用回数は同じですが、2個押されたカードの方で完成率が高くなりました。これらはその実験の結果であり、あらゆるスタンプカードで同じ差が出るという数字ではありません。
「始めていない」と「途中」の違い
0/8個なら、これから始める課題に見えます。2/10個なら、すでに進んでいて、途中にある課題に見えます。残りの距離は同じでも、現在地の受け取り方が違うのです。
ゴールへ近づくほど努力が増えるというゴール勾配の考え方とも関係しますが、この実験は実際の残り回数を減らしたわけではありません。進捗の与え方や、それをどう説明するかも関係する点が、この効果の特徴です。
学習やアプリでは、どう考えられる?
たとえば初回の案内を終えた学習者に、「準備が終わりました。次は最初の問題へ」と伝えると、何もしていない状態ではなく、道の途中として見せられます。ゲームなら、短い練習を終えた後に、習得した操作を表示する方法が考えられます。
これは設計の例であって、その表示を付ければ継続率が上がると確定するものではありません。利用者が目標を理解しているか、続けたいと思う内容があるかも大切です。
- 終えたことを、具体的に示す。「準備完了」「操作を1つ練習した」など。
- 残りの課題や必要な条件を、わかりやすく見せる。
- 最初の特典やボーナスには、何が与えられたのかを説明する。
- 進捗の数字だけでなく、活動そのものの価値を確かめる。
見せかけの進捗にしない
実際には何も終わっていないのに、「ほぼ完成」と表示するのは、期待を裏切ることになります。区切りを変えるなら、何を全体として数えているのかがわかる形にしたいところです。
自分の作業でも、完了した準備を記録し、次の一手を小さくする方法は試せます。ただし、やる気が出ないときに「少し進めば必ず解決する」と自分を追い込む必要はありません。進捗の表示は、続けたい活動を助ける道具です。全体の設計はゲーミフィケーション、最初の操作の伝え方はゲームのルール説明の記事でも考えています。

