結果を知ったあとで、「やっぱりそうなると思っていた」と感じたことはありませんか。けれど、結果が出る前の自分は、いくつもの可能性で迷っていたかもしれません。後知恵バイアスは、起きたことを、前から予測できたように感じる傾向です。
後知恵バイアスの意味
後知恵バイアスは、結果を知ることで、その出来事が当初からどれくらい予測できたかの評価が変わることです。「知っていた」「当然だった」と感じても、当時の情報と、いま手元にある情報は同じではありません。
フィッシュホフの1975年の研究では、出来事の結果を伝えられた人が、その結果の起こりやすさを高く見積もることなどが調べられました。本人は、結果を知ったことの影響に十分に気づかず、結果を知らない自分や他人がわかったはずのことを、多く見積もる傾向が示されています。
当時は、ほかの道もあった
旅行のルートを決める場面を考えます。短い道と、少し長いけれど通り慣れた道がある。短い道を選び、工事で遅れたら、「長い道にすればよかったのに」と感じるかもしれません。
しかし、出発時に工事の情報がなければ、その遅れを予測するのは難しかった可能性があります。反対に、工事情報を見落としていたなら、調べ方を改善できます。同じ遅刻でも、当時何を知っていたかで、振り返る点が変わります。
結果バイアスとは、どこが違う?
結果バイアスは、結果の良し悪しによって、判断そのものの良し悪しを評価してしまうことです。後知恵バイアスが「予測できたはずだ」に注目するのに対し、こちらは「成功したから良い判断だった」に注目します。
| 感じ方 | 注目するずれ |
|---|---|
| そうなると前からわかっていた | 当時の予測可能性を高く見積もる |
| うまくいったから、選び方も正しかった | 結果で判断の質を評価する |
二つは重なることがあります。成功を見て「当然の選択だった」と言えば、結果の評価と、予測の記憶が一緒に変わっているかもしれません。
アプリ制作の振り返りに使ってみる
二つの操作説明から一つを選ぶ、という例を考えます。Aは短い文章、Bは画面を順に見せる説明。公開後にBがわかりやすいと感じられたとしても、最初からBのほうが良いと確定していたわけではありません。
当時は、説明を見る時間が長くなりすぎる心配があったかもしれません。Bが合わなかった利用者もいたかもしれません。結果を見てから判断の理由を作るより、選ぶ時点で理由を短く残すと、後で比較できます。
判断のメモに残したい4項目
- 選択肢:何と何を比べたのか。
- 当時の情報:何を確認でき、何がわからなかったのか。
- 予想:何が起こりそうだと考え、何を心配したのか。
- 選んだ理由:どの条件を優先したのか。
長い報告書にする必要はありません。「まず短い説明で始める。初回で迷う人が多ければ画像を増やす」という一文でも、当時の問いと、その後に見る点が残ります。
成功も失敗も、次の判断につなげる
成功したら、どの工夫が効いたのかを考えます。失敗したら、見落としや想定外の条件を考えます。ただし、成功だからすべて正しかった、失敗だからすべて間違っていた、とまとめると、使える知見が少なくなります。
難しい挑戦が成功したなら、良い対応があったのか、偶然の条件が有利に働いたのかを分けてみる。挑戦そのものを一律に否定するのでもなく、結果だけで美談にするのでもなく、次に再現できる部分を探せます。
「やっぱり」と言いたくなったとき、当時のメモへ戻る。覚えている予測と、実際に残した予測の差を見ると、振り返りが少し具体的になります。
