ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
シグナリング理論とは?
シグナリング理論とは、2001年にノーベル経済学賞を受賞した、マイケル・スペンスによって提唱された情報の非対称性についての理論です。
情報の非対称性とは、ある主体と別の主体がそれぞれ持っている情報の量や質に差がある状態を指します。
例えば、中古車の販売店では、ディーラーが持っている商品についての情報と、客が知ることのできる商品の情報には大きな差があるため、情報が非対称であると言えます。
シグナリングは、こうした情報の非対称性がある場合に、情報を持っている側が情報を持っていない側に対して情報の開示を行う行為を指します。
例えば、以下のような行為がシグナリングと言えます。
・商品の販売者が、客に商品内容の説明を行う
・求職者が企業に自分の資格や経歴の情報を伝える
・企業が決算情報を投資家に公開する
学歴フィルターの正当性
就活において、企業側がある程度以上の学歴を持っていない就活生を、そもそも応募させなくしたり、面接をしても最初から不合格と決めてしまっているような行為は「学歴フィルター」と呼ばれています。
このように、シグナリングによって開示された情報を利用して、選別を行うことをスクリーニングと呼んでいます。
以前、ある企業の採用ページの説明会の申し込みが、低学歴の大学出身者には「満員」と表示されている一方、高学歴の大学出身者には「残席あり」と表示されていたことで、批判が殺到したというニュースがありました。
一見すると、学歴によって応募者を差別する行為は悪いことのように思えます。
しかし、こうした学歴によるスクリーニングは本当に悪いことなのでしょうか?
私は学歴フィルターは、企業側としては優れた戦略だと考えます。
高学歴の方が優秀な人間である確率が高いので、最初から高学歴の人だけを集めてその中から選別した方が効率が良いからです。
こんなことを言うと、「学歴が無くても優秀な人間はいる!」「ZOZOTOWNの前澤社長は高卒だぞ!」と批判する人が良くいます。
しかし、そうした議論は誤りです。
何も高学歴の人が全員優秀で、低学歴の人が全員無能だと言っている訳ではありません。
学歴フィルターの賛成派は「高学歴の人の方が仕事においても優秀である傾向ある」という統計的な事実を利用しているだけなのです。
例えば、5個の中に3個当たりが入っているクジ①と、5個の中に1個しか当たりが入っていないクジ②があれば、前者のクジ①を選ぶのが当然でしょう。
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これと同様に、採用活動においても、最初から学歴である程度絞ってしまい、当たり(優秀な人)の確率を上げてしまった方が良いのです。
そのため、低学歴でも優秀な人が存在することを提示したとても、学歴フィルターへの反論になっていません。
そうした反論は、クジ②にも1/5だけで当たりが入っていることを大声で叫んでいるだけで、無意味なのです。
大量の応募者の中から、優秀な人を探す採用活動は企業側にとっても非常に大変な作業です。
学歴フィルターはシグナリング情報を活用して、採用を効率良く行おうとする行為です。
頭ごなしに批判する前に、裏にはこうした論理があることを認識しておくべきです。
日常会話での使用方法
「あの会社は学歴フィルターを使ってて最悪だ!」
「シグナリング理論を考えると合理的だよ」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。