広告・PR:この記事にはアフィリエイト広告を含みます。
仕事ができる人を上司にすれば、チームもうまくいく。そう思いたくなりますが、担当者としての腕前と、人をまとめる力は同じではありません。ピーターの法則は、この昇進の落とし穴を鮮やかに表した考え方です。
目次
ピーターの法則とは
ピーターの法則は、階層のある組織では、人は能力を発揮できなくなる段階まで昇進していく、という見方です。ローレンス・J・ピーターとレイモンド・ハルの著書で知られるようになりました。
現在の仕事でよい成績を出すと昇進する。次の仕事でも成績がよければ、さらに昇進する。そして、不得意な仕事に当たると昇進が止まる。この仕組みなら、人は得意な役割で止まるのではなく、うまくできなくなった役割に留まりやすい、というわけです。
「無能」という強い言葉が使われることもありますが、その人に能力が何もないという意味で読むと、本題を見失います。問題は、人と役割の組み合わせです。
担当者の仕事と、上司の仕事は違う
たとえば、プログラマーとして複雑な不具合を素早く直せる人が、チームの管理を任される場面を考えましょう。本人が手を動かすだけなら速くても、全員の仕事を代わりに終えることはできません。
| 担当者として重要なこと | 管理職として重要なこと |
|---|---|
| 自分の作業を正確に進める | チームの優先順位をそろえる |
| 自分の専門分野を深く理解する | 異なる専門性を持つ人の力を組み合わせる |
| 自分で問題を解く | 人に任せ、相談や判断が必要な場面を支える |
どちらが上等という話ではありません。必要な能力が変わるので、前の仕事の実績だけでは、次の役割での活躍を十分に予測できないのです。
実際の研究ではどう考えられているか
ベンソン、リー、シューによる2019年の研究は、米国の131社の営業職のデータを分析しました。現在の営業成績が昇進で重視される一方、その重視の仕方が管理職としての適性を優先する選び方とずれるという、ピーターの法則に整合する結果を報告しています。
ただし、ここから「すべての上司は無能」「優秀な担当者を昇進させてはいけない」とは言えません。本人への報酬や、働く意欲を保つ制度という目的もあります。昇進を、業績へのご褒美と次の仕事への配置の両方に使うことが、難しさを生むのです。
組織ができる三つの工夫
- 次の仕事で必要な能力を見る。個人の成績に加えて、育成、調整、意思決定などを具体的な行動で評価する。
- 昇進の前後に練習の機会を作る。小さなチームの進行を任せ、研修や相談役を用意する。
- 管理職以外にも報われる道を作る。専門職として働きながら、貢献に応じて評価や待遇を高められるようにする。
役職を完全に固定すれば解決する、というわけでもありません。仕事も本人の能力も変化します。いったん就いた役割を見直せること、役割の変更が一方的な失敗扱いにならないことも大切です。
昇進を考える本人にも使える視点
新しい役職を打診されたら、肩書きや給与だけでなく、日々の作業がどう変わるかを聞いてみると判断しやすくなります。人を育てる時間が増えるのか、会議や調整が中心になるのか、専門の仕事を続けられるのか。
「今の仕事が得意だから、次も当然できる」と考えるより、「次の仕事をできるようになるには何が必要か」と考える。その問いなら、訓練や支援を具体的に選べます。
ピーターの法則を、人を見下すための言葉で終わらせるのはもったいない。誰かが力を発揮できないとき、その人だけでなく、任せた仕事と支える仕組みにも目を向ける。そこに、この考え方の実用的な面白さがあります。
昇進前後で、求められる仕事を並べる
一人で高品質なコードを書く仕事と、担当を配分してチームの障害を取り除く仕事では、評価する行動が変わります。新しい役割の練習や支援なしに、以前の成績だけで適性を推定しないことがポイントです。「昇進した人はいずれ無能になる」と個人を断定する言葉にはしません。
