双子のクローン赤ちゃんの思考実験|同じ条件なら、同じ選択をする?

今の自分と、体も記憶も完全に同じもう一人がいたら。二人に同じ選択肢を見せたとき、必ず同じものを選ぶでしょうか。「自分で決める」とは何かを考えるために、条件を極端にそろえてみます。

双子のクローン赤ちゃんという設定

この思考実験では、二人の赤ちゃんの体が原子レベルで同じで、育つ環境も、受ける刺激も完全に同じだと仮定します。その二人が成長したら、同じ場面で同じ行動をするでしょうか。

ここでの「完全に同じ」は、現実のクローンより強い仮定です。クローンは遺伝的なコピーを扱う言葉で、記憶や経験まで同じ人を作る意味ではありません。米国立ヒトゲノム研究所の解説でも、同じ遺伝的な材料を持っていても、環境などが特徴に関わることが説明されています。

二人を実際に育てて答えを測るというより、身体や経験をそろえた設定から、選択に何が必要かを考える哲学の問いです。

同じ行動なら、自由意志はない?

もし世界のすべての出来事が、以前の状態と自然法則によって決まるなら、完全に同じ条件からは同じ結果が生じる、と考えられます。この考え方が決定論です。

ただし、「同じ行動になる」から、すぐ「本人の考えは何も関係ない」とは言えません。好き嫌いを思い出すこと、理由を比べること、迷った末に決めることも、その人の中で起きる過程だからです。

たとえば二人ともリンゴを選んだとして、一方が「味が好きだから」と考えて選ぶなら、もう一方も同じ理由で考えて選んだのかもしれません。同じ選択であることと、考える過程がないことは別です。

違う行動なら、自由意志がある?

逆に、同じ条件から違う結果が出たら、自由意志の証明になるでしょうか。結果に偶然が入り込んだ可能性も考えられます。

リンゴとミカンのどちらを取るかを、コインのようなランダムな仕組みで決めたとしたら。結果が決まっていないことだけで、自分が判断を制御したとは言えません。

「決まっていない」と「自分で決めている」は、同じではない。この違いが、思考実験を単純な二択で終わらせない理由です。

自由意志と決定論は、両立する?

自由意志には、同じ過去から別の選択もできることが必要だ、と考える立場があります。一方、自分の理由や価値観に基づいて、強制されずに選ぶことを重視し、決定論と自由意志は両立すると考える立場もあります。後者が両立論です。

この対立は、Stanford哲学百科事典の両立論の項目でも扱われています。何を自由と呼ぶかによって、同じ設定からの結論が変わるのです。

自由のどこを重視するか思考実験での問い
同じ条件でも別の選択ができる条件を完全にそろえても、分岐できるのか
自分の理由に基づいて選べる強制や操作ではなく、自分で検討しているか
選択を制御できる偶然の結果と、自分の判断をどう区別するか

原因があることと、変えられないこと

過去の経験が今の選択に影響しているとしても、勉強する、相談する、環境を変えるといった行動も、次の選択に影響します。原因があるという話を、「何をしても同じだから、何もしなくてよい」という話に変えると、自分の行動まで条件の一部であることを見落とします。

たとえば、集中できない場所から静かな場所へ移れば、選ぶ行動も変わるかもしれません。自由意志の哲学的な問題が解決していなくても、判断しやすい環境を考えることはできます。

双子のクローン赤ちゃんの問いは、「同じなら自由がない、違えば自由がある」で終わりません。選択の結果、考える過程、偶然、強制を分けると、自分で決めるという言葉の中に、いくつもの問題があると分かります。世界の予測可能性については、ラプラスの悪魔の記事も合わせて読めます。

同じ遺伝子と、完全に同じ状態を区別する

現実の遺伝的な一致、経験を含む状態の一致、将来の入力までの一致は、それぞれ異なる条件です。この思考実験の結論を現実の双子へそのまま移すと、強い仮定が抜け落ちます。どこまで同じと置いたかを書いた上で、決定論と予測可能性、偶然と本人の制御を別々に問うと、議論を進めやすくなります。

決定論と両立論を読み比べる

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