「成功率90%」と「失敗率10%」。成功か失敗のどちらかになる条件なら、同じ結果を表しています。それでも、受ける印象は少し違うかもしれません。結果をどの角度から見せるかによって、判断や選択が変わる現象がフレーミング効果です。
フレーミング効果の意味
同じ内容でも、利益・損失、成功・失敗など、表現の枠組みが変わると選択が変わりうることを指します。「フレーム」は、物事を見るための枠という意味です。
カーネマンとトヴェルスキーは1981年の論文で、結果の条件を同じにしても、示し方によって好まれる選択肢が変わる例を報告しました。『The Framing of Decisions and the Psychology of Choice』
600人の疾病問題
論文には、病気への対策を選ぶ架空の質問があります。何もしなければ600人が亡くなると予想され、二つの対策について、次の結果が正確にわかっていると仮定します。現実の治療法を選ぶ案内ではなく、選び方を調べる思考課題です。
- 対策A:200人が助かる。
- 対策B:3分の1の確率で600人が助かり、3分の2の確率で誰も助からない。
この表現では、152人の回答者のうち、Aが72%、Bが28%でした。別の155人には、次のように表現して尋ねています。
- 対策C:400人が亡くなる。
- 対策D:3分の1の確率で誰も亡くならず、3分の2の確率で600人が亡くなる。
こちらではCが22%、Dが78%でした。600人のうち200人が助かるAは、400人が亡くなるCと同じ結果です。BとDも、確率と結果を言い換えただけです。
「助かる人数」を見せたときは確実な案が、「亡くなる人数」を見せたときは不確実な案が多く選ばれたのです。同じ人全員が途中で選択を変えたという実験ではなく、異なる回答者の集団を比較した結果です。
損を避けたい気持ちとのつながり
「200人を確実に救える」と考えると、その結果を確保したくなる。一方、「400人の死が確実」と考えると、全員を救える可能性にかけたくなる。論文では、利益と損失に対するリスクの態度が、表現の違いと組み合わさると考察されています。
この考え方は、プロスペクト理論につながります。ただし、言葉を変えれば誰でも必ず同じように動く、という公式ではありません。
日常の例は「同じ情報か」も確認する
月1,000円の値引きと、年間12,000円の値引きは、同じ条件が12か月続けば同じ金額です。大きく見える数字だけでなく、期間をそろえて比べると判断しやすくなります。
また、「6試合無敗」と「1勝5引き分け」は、同じチームの成績として両方正しいことがあります。しかし、前者だけでは勝ち数がわかりません。これは表現の印象に加え、情報をどこまで示したかも違います。
成功率の例でも、対象人数、成功の定義、調べた期間が違えば、単純な言い換えではありません。「同じ数字を別の角度で見せている」のか、「必要な条件が抜けている」のかを分けて読むことが大切です。
選ぶ前に、枠を一度外してみる
- 良い結果と悪い結果を、両方の言葉で書く。
- 金額・人数・期間・確率の単位をそろえる。
- 確実な結果と、起こるかもしれない結果を分ける。
- 表現を変えても同じ選択をしたいか考える。
作り手として伝える場合も、魅力を示す言葉に、比較に必要な条件を添えましょう。伝え方は理解を助ける道具になります。その力を知っていれば、読む側も、書く側も、数字と印象を少し丁寧に分けられます。
