サバンナ理論とは?『孤独な人はIQが高い』という話を読み解く

サバンナ理論は、祖先の環境と現代の環境の違いから、幸福や生活満足度を説明しようとする仮説です。「孤独な人はIQが高い」という人物判定の法則ではありません。友人の数・交流の頻度・満足度を分け、2016年の研究が調べたことと、そこからは言えないことを読み解きます。

サバンナ理論の意味

サバンナ理論は、人間が進化してきた環境と現代の環境の違いから、幸福や生活満足度を説明しようとする仮説です。祖先が暮らした環境で役立った心の働きが、今の生活にも影響する、という考え方が出発点になります。

この説を用いて、ノーマン・リーと金沢智が2016年の論文で調べたのが、人口密度、友人と交流する頻度、知能と生活満足度の関係です。『都会の孤独な人は優秀』という人物像を認定する法則ではありません。

研究で調べたのは、友人の数より交流の頻度

この研究が分析したのは、米国の追跡調査Add Healthのうち、2001〜2002年に18〜28歳の人たちへ行った調査です。交流の頻度は、直近7日間に友人と過ごしたり、5分を超える電話をしたりした回数で測っています。友人の総数や、一人でいたい気持ちを直接測ったものではありません。

人口密度が高いほど生活満足度が低い関連がありました。また、婚姻状況などを考慮した分析では、友人との交流が多いほど満足度が高い関連が見られました。ただし、その関係は知能との組み合わせで変わり、知能の高い人では、交流が頻繁なほど満足度が低い関連も報告されました。

一方、同じデータでは、知能が高い人ほど交流の頻度自体は多い傾向もありました。「交流と満足度の関係」と「誰がどれだけ交流しているか」は別の結果です。「頭のよい人ほど孤独を好む」と、そのまま読み替えることはできません。

ここで注目したいのは、友人の数、会う頻度、一人でいる時間、寂しさは、それぞれ違うということです。会う回数が少なくても信頼する友人がいる人もいれば、大勢と会っていても孤独を感じる人もいます。

よくある読み替え分けて考えたいこと
交流が少ない=友人がいない会う頻度と関係の有無は別
一人が好き=寂しくない望んだ一人の時間と、望まない孤立は別
都会に住む=都会を好む住む場所と、そこを選ぶ理由は別
統計上の関連=誰にでも当てはまる集団の傾向だけでは個人を判断できない

『なぜそうなるか』は、もう一段考える問い

仮に、ある集団で交流の多さと満足度の低さが関連していても、その理由まで一つに決まるわけではありません。予定が多くて疲れたのか、別の活動に時間を使いたいのか、交流の内容が合っていないのか。人数や頻度だけでは、違いを捉えきれません。

『頭がよい人は他人に足を引っ張られるから、一人でよい』と説明すると、研究結果に、他人を見下す物語を足してしまいます。進化からの説明も、検討するための仮説です。友人を減らしたら知能が上がる、という手順にはなりません。

自分に合う付き合い方を考える

日常で使うなら、『何人と会うのが正解か』より、会った後に自分がどう感じたかを見る方が役立ちます。大人数の集まりでは疲れるけれど、一人の友人と話すと落ち着くなら、その違いが大切な情報です。

  • 一人で集中したい時間と、人とつながりたい時間を分ける。
  • 予定の回数だけでなく、安心して話せたかを振り返る。
  • 『賢い人らしい生活』より、自分が続けやすい暮らしを選ぶ。

例えば、ゲーム作りに集中する日は予定を少なくし、試作品ができたら人に遊んでもらう。集中と交流は、どちらかを捨てる二択でなく、目的に合わせて組み合わせられます。

サバンナ理論は、自分や他人にIQのラベルを貼るために使うより、『同じ環境が、誰にとっても同じように心地よいわけではない』と考える入口にすると面白くなります。自分の考え方を観察する視点は、メタ認知の記事でも紹介しています。

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