アンダーマイニング効果とは?報酬がやる気を支えるとき、削ぐとき

好きで描いていた絵なのに、「一枚描くごとにご褒美」と決まると、いつの間にかご褒美のために描くようになる。報酬はやる気を支えることもあれば、もともとの楽しさを弱めることもあります。アンダーマイニング効果は、この違いを考えるための言葉です。

活動そのものの楽しさと、外から与えられる理由

アンダーマイニング効果とは、もともと興味を持ってしていた活動に外的な報酬などが加わり、内発的な動機づけが弱まる現象です。

内発的動機づけは、「面白いから」「もっと知りたいから」と活動そのものに理由がある状態。外発的動機づけは、報酬や評価など、活動の外にある結果を理由にすることです。両方の理由を持つこともあります。

報酬がある間に取り組む量が増えても、報酬がなくなった後の興味が同じとは限りません。目の前の行動と、自分から続けたい気持ちを分けて見るのがポイントです。

研究では「報酬を予告したか」も比べられた

レッパー、グリーン、ニスベットの1973年の研究は、活動に興味を示していた子どもを、報酬を予告する条件、終わってから予期しない報酬を渡す条件、報酬のない条件に分けました。報酬を予告された条件では、その後の活動への興味が低くなる結果でした。

「報酬を一度でも渡したら楽しさが壊れる」という結果ではありません。活動を始める理由として報酬を前に出すことと、終わった後に受け取ることが、分けて調べられています。

報酬を全部なくせばよいわけではない

デシらの1999年のメタ分析も、報酬の種類や条件を分けて検討しています。有形の報酬や予期された報酬で興味が弱まる結果がある一方、肯定的なフィードバックは興味を高める方向でした。

だから、給料や報酬を払わないことを正当化する話ではありません。仕事の対価が必要であることと、その仕事のやりがいや裁量をどう支えるかは、同時に考えられます。「趣味は仕事にすると必ず嫌いになる」とも言い切れません。

また、報酬を得るために行動する意欲が増えたことと、活動そのものへの興味が高まったことは別です。外からの働きかけでやる気が高まる話を、エンハンシング効果と呼ぶこともありますが、何のやる気を見ているかまで確認したいところです。

褒めるなら、できたことが分かる言葉を

たとえば謎を解いた人に、「すごい」と言うだけでなく、「同じ記号を見つけて、順番を比べたんだね」と伝える。取り組んだ工夫が見えると、次にも使える情報になります。

逆に、いつも誰かより優れているかだけを評価すると、他人との順位が活動の中心になるかもしれません。「どう考えたか」「前より何ができたか」を聞けば、活動そのものの面白さを一緒に振り返れます。

ゲームの報酬は、遊ぶ目的と結びついているか

架空の謎解きゲームで、毎日ログインした回数だけを大きく評価するとします。ユーザーが楽しみたいのは謎を解くことなのに、来なかった日の損失ばかり気になる設計なら、遊びの目的がずれてしまいそうです。

一方、解いた仕掛けの図鑑が増える、新しい解き方を振り返れるなど、報酬が体験の意味と結びついている設計も考えられます。数字を増やすこと自体より、報酬を見たあとに何を楽しんでもらいたいかを決めると、作るものが具体的になります。

試遊では、報酬画面への反応だけでなく、「次もこの遊びをしたいか」「面白かったのはどこか」を聞けます。目立つご褒美と、ゲームの中心の楽しさを分けて見る方法です。

ご褒美を使う前に、困っている理由を聞く

勉強や練習を始めない理由が、難しすぎることなら、報酬だけ増やしても問題は残ります。何から始めればよいか分からない、疲れている、道具が使いづらいなど、別の理由もあるでしょう。

本人が楽しいと感じる部分を聞き、始められる大きさへ分け、選べる余地を作る。報酬を使う場合にも、その前後でどんな気持ちだったかを聞く。ご褒美は一つの手段として、活動の中身と一緒に考えられます。

やる気を失わせて行動を止めようとするより、時間や目的を相談するほうが、相手の楽しみも尊重できます。遊びの仕組みを別の活動に取り入れるゲーミフィケーション、小さな進みを見せる進捗付与効果も、合わせてどうぞ。

レビューの結論が違うときは、報酬と測定を分ける

CameronとPierce(1994)は、報酬全般が内発的動機を下げるという結論には否定的で、予告された物的報酬を、作業への参加だけに与える場合などを区別しました。本文で紹介したDeciら(1999)とは、対象研究や条件の整理も含めて比較する必要があります。

たとえば「10問解いた直後の満足度」「報酬がなくなった後に自分から問題を解く時間」「1週間後の理解度」は、同じ指標ではありません。一つが下がったから他もすべて下がるとは言えません。報酬の有無だけを一括りにせず、予告、達成条件、元からの興味、測定時点をそろえて読みます。

この研究群を、働いた人への適切な報酬をなくす理由にはできません。興味の維持と、労働への対価は別に考えるべき問題です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です