ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
アンダーマイニング効果とは
アンダーマイニング効果とは、内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーションが低下してしまうという心理学的な現象です。
例えば、自ら進んで勉強をしている子供に「テストで10位以内に入ったらお小遣いを1000円上げるよ」といった報酬を与えた場合、お小遣いをもらおうと頑張っている間はやる気が上がりますが、報酬が無くなると勉強をしなくなってしまうようなことがあります。
これは、最初は自分の意志で楽しく行っていたことも、報酬を得るための手段となってしまい、徐々に本来の楽しさを忘れてしまうことが原因だと考えられます。
趣味を仕事にするのは良くないという俗説も、こうした効果によるものでしょう。
人は何かをやらされている、やらなければならないと感じると反発したくなるものです。
自主的に楽しんでいた勉強も、報酬を得るために「やらなければならないこと」になってしまうので、最終的にやる気を失ってしまうのです。
これは心理的リアクタンスと呼ばれる効果で、以下の記事でも紹介しています。
ちなみに、アンダーマイン(undermine)とは、「ひそかに傷つける」や「土台を崩す」という意味の英語です。
報酬を与えることでやる気を失わせるという効果を逆に利用し、ゲームばかりしている子供にゲームのクリアごとに賞金を与えるなどして、ゲーム嫌いにするという使い方も可能です。
エンハンシング効果とは
アンダーマイニング効果によると報酬を与えることは悪いことのように思えます。
しかし、逆に報酬によってモチベーションが上がる状況があることは想像に難くありません。
例えば、自分が書いた文章を読んでもらうことを通して、お金を稼いだり人から褒められたりするのが好きな人は、お金や賞賛によって、文字を書くことに対してやる気が満ち溢れてくるでしょう。
このように、アンダーマイニング効果とは逆に、外発的動機づけによってモチベーションを向上させることができる現象を、エンハンシング効果と呼んでいます。
報酬を目的としてやる気を高めることで、通常より大きな力を発揮できるようになるため、報酬による外的な動機づけは非常に有効です。
報酬の是非を判断する方法
以上のことからわかる通り、報酬は使い方によっては悪い方向にも良い方向にも働きます。
どちらの方向に働くかは時と場合によるでしょうが、報酬を与えるべきかの指標として、「本人がその行為を自主的に始めたかどうか」が挙げられます。
勉強の場合を例にすると、本人が自主的に勉強を始めた場合は、既に内発的に動機づけられており、勉強それ自体を楽しんでいると考えられます。
その場合は、報酬を与えずとも、本人は勉強を続けるでしょうし、報酬を与えることで逆にやる気を失わせる結果となってしまうかもしれません。
逆に、本人が全く勉強をしたがらない場合は、報酬を与えることを考えるべきかもしれません。
初めのうちは報酬が目的でも、始めるうちに徐々に勉強が好きになるかもしれません。
日常会話での使用方法
「テレビゲームのステージをクリアする毎に100円あげるよ」
「アンダーマイニング効果でゲームを止めさせようとしておるな」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。