安全保障のジレンマ:核兵器は平和の象徴?(知的な小話50)

ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。

安全保障のジレンマとは

安全保障のジレンマとは、自国の安全を守ろうとする行動が、逆に危険を生み出してしまうという政治学上の問題です。

国家は、平和を望みつつ、他国の侵略から自国の安全を守るために軍備増強や同盟締結などを行います。

しかし、そうした行動を知った周囲にいる別の国家も、そのままでは軍事力の差によって侵略されてしまう可能性があるため、軍拡や同盟を結ぶなどの同様の行動をとるしかありません。

そして、その行動を受けて、また周りの国家も軍事力を増強せざるを得なくなります。

その結果、実際には双方とも衝突を避けたいにも関わらず、結果的に緊張の増加を生み出してしまいます。

各国は最適な行動をしているにも関わらず、全体でみると緊張が高まってしまっているという点で、囚人のジレンマにおける合成の誤謬と同様です。

憲法9条を改憲する政権を、「戦争を始めようとしている!」と批判する意見がありますが、安全保障のジレンマを考慮すると、平和憲法の改憲や軍拡も、平和を目指しての施策であると言えます。

大切なものを守るためには強くならなくてはならないのです。

相互確証破壊とは

逆の考え方としては、双方が核兵器などの強大な破壊力を持つ武器を所有することで、戦争を始めたら互いに壊滅的なダメージを受けるという状況を作り、逆に戦争が抑止されるという議論も存在します。 

このような、核兵器が戦争抑止に繋がるという考え方は「相互確証破壊」と呼ばれ、冷戦時代にアメリカとソ連の間で直接的な軍事衝突が起きなかったのは、こうした効果があったためだと言われています。

戦争を開始した時点で、互いの国家の滅亡が確定するという状況が、戦争の開始を躊躇させるというすれすれのところで、戦争を抑止しているのです。

現在までは、相互確証破壊の力もあってか、核保有国同士の直接の戦争は起きていませんが、このような綱渡りの平和がいつまでも続く保証はありません。

暴走した独裁者が核ミサイルの発射ボタンを押してしまうなど、何かのきっかけで核保有国同士の戦争が始まってしまうかもしれません。

人類の英知の結晶である科学が生み出したものが、人類を滅亡させ得る道具とは皮肉なものです。

日常会話での使用方法

「北朝鮮がまたミサイルの開発をしてるらしいぞ」

「安全保障のジレンマだね」



本サイトで紹介している用語一覧は以下です。



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