ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
ニューカムのパラドックスとは
ニューカムのパラドックスとは、数学者であり哲学者でもあるウィリアム・ニューカムによって提示された、未来予知に関する問題です。
ある知的生命体がいて、その生命体は未来を100%の精度で予測することができるとします。
この知的生命体はAとBの2つの箱を用意し、事前に中に現金を入れておきます。
箱Aには現金100万円が入っており、箱Bには0円か1億円のどちらかが入っています。
ここで、あなたには2つの選択肢があり、箱Bの中身を貰うことか、箱Aと箱Bの両方の中身を貰うことが選べます。
ただし、知的生命体は、あなたが箱Bだけを選ぶと予想した場合は、箱Bには1億円を、あなたが箱Aと箱Bの両方を選ぶと予想した場合は、箱Bには0円を入れておきます。
この時、箱Bだけを選ぶか、箱Aと箱Bの両方を選ぶか、どちらが最も多い金額を得ることができるのでしょうか。
2通りの考え方
この問題は1960年代に紹介されたものですが、その解答の結論は出ておらず、現在でも数学界・哲学界を二分しています。
箱Bだけを選ぶ派の考え方
知的生命体の予知能力が確かであると仮定している以上、箱Bだけを選ぶべきだと考えるのが普通でしょう。
知的生命体は未来のことが全てわかるので、箱Aと箱Bの両方を選択しようとしても、その考えは既に読まれていることになります。
そのため、両方の箱を選択しても、その考えは予測済みであり、箱Bには1億円は入っておらず、箱Aの100万円だけを得ることになります。
よって、知的生命体の予知能力を信じて箱Bだけを選択し、1億円を手にした方が良いというのが、箱Bだけを選択すべきだという考え方です。
箱Aと箱Bの両方を選ぶ派の考え方
一方で、箱Aと箱Bの両方を選択した方が良いという考え方もあります。
この考え方は、たとえ予知能力がある知的生命体でも、時間を遡って過去の事実を変更することはできないという考えに基づきます。
知的生命体は未来を予測して箱の中身を準備しますが、あなたがどの箱の中身を貰うか選択する時点では、箱の中身を変更することはできません。
そのため、あなたが箱Bだけを選択しても、箱Aと箱Bの両方を選択しても、箱の中身は変わらないということになります。
であれば、わざわざ箱Bだけを選択して、確実に100万円が入っている箱Aを諦め、1億100万円を手にする可能性を逃す必要はないというのがこちら側の考え方です。
どちらの解答にも相応の説得力があり、どちらが正しいのかの結論は誰も出せていません。
ちなみに、ガーディアン紙が取った31,854人を対象にしたアンケートでは、箱Bだけを選択すると答えた人は53.5%で、両方を選択すると答えた人は46.5%だったそうです。
ここでは架空の知的生命体を仮定しましたが、未来を知る生き物として、ラプラスの悪魔という考え方が存在します。
日常会話での使用方法
「箱Bには0円か1億円が入っていて・・・」
「未来わかってるならそんなまどろっこしいやり方せずに、お金くれよ」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。