予防的正義:何もしてないのに逮捕される?(知的な小話41)

ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。

予防的正義とは

予防的正義とは、自由主義とは何かを考えさせる問いかけです。

近い将来、人工知能の発達により、「犯罪を犯しそうな人」が事前にわかるようになったとします。

人工知能は性別や年齢、年収や社会的立場などの様々な要因から、人間の行動や思考を把握し、犯罪を犯す可能性を計算で知ることができます。

その場合、計算によって、ある人が犯罪を起こすことが確定した時点で、犯罪を犯す前に未然に逮捕することは許されるでしょうか?

犯罪を未然に防ぐという意味では、犯罪をする前に逮捕する行為は正義だと思える一方、自分が逮捕される側の立場になる可能性があることを考えると、納得がいかないような気もします。

ちなみにトム・クルーズが主演の『マイノリティ・リポート』はこの予防的正義を題材にした映画です。

3人の予知能力者で構成されたシステムによる犯罪予防により、殺人の発生率が0%になった西暦2054年のワシントンを描いた物語で、非常に面白いです。

共謀罪とは

2017年6月15日に、共謀罪法案が可決され、日本でも共謀罪(テロ等準備罪)が成立するようになりました。

共謀罪とは、特定の犯罪を行おうと合意し、準備をした段階で、実際に犯罪を行わなくても検挙・処罰ができるようになる法律です。

法務省では、以下の3つの条件を満たす場合、共謀罪が適用されるとしています。

1.組織的犯罪集団の関与

2.2人以上による計画

3.計画にもとづく実行準備行為


これはまさに予防的正義の考え方を元に作られた法律です。

共謀罪のメリットとしては、犯罪の予防が挙げられ、将来行われるであろう犯罪による被害者を救うことができます。

一方で、共謀罪には以下のような問題点もあります。

①自由の制限
共謀罪が成立すると、犯罪を行っていないにも関わらず、逮捕される場合があります。
そのため、例えば居酒屋で冗談半分に「あの上司を殺してやりたい」と言っただけでも逮捕されるのではないかという危惧があります。
実際には現在の共謀罪は厳格な要件に当てはまった場合のみに適用されるため、発言の良し悪しは別として、このような暴言を吐いたところで逮捕される心配はありません。

②監視社会の到来
共謀罪の成立により、警察の捜査権限が拡大し、電話やメールが傍聴されてしまうというリスクも挙げられます。
アメリカでは、2001年から既に共謀罪が成立しており、NSA(国家安全保障局)やCIA、FBI(連邦捜査局) は令状無しに国民の電話を盗聴しているという主張もあります。
日本の法務省は、共謀罪の新設に際して新たな捜査手段の合法化は行わないと明言しているので、現段階ではそのような心配は無さそうです。

③冤罪の増加
共謀罪では、犯罪の実行を伴わず、処罰がされます。
そのため、冤罪の増加が危惧されています。

このように、共謀罪にはメリットもデメリットもあります。

予防的正義が行き過ぎてしまわないよう正しく運用していくことが大切です。

日常会話での使用方法

「ゲーム買ったらどうせ勉強しなくなるから買いません!」

「それは予防的正義だ!」



本サイトで紹介している用語一覧は以下です。



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