ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
臓器くじとは
臓器くじとは、ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるかを問う思考実験です。
病院に5人の患者がいて、それぞれが異なる臓器の移植を必要としています。
ある1人は肝臓が悪く、別の1人は腎臓が悪い、といった具合です。
移植をしないと近い将来この患者たちは死んでしまいます。
そこに全ての臓器が健康な患者が現れました。
彼を殺して臓器をそれぞれの患者に移植すれば5人を助けることができます。
1人の男を殺して内臓を取り出し、5人の患者を救う選択は正しいと言えるでしょうか?
5人を救うために、1人を犠牲にすることは正しいかを問う点で、この問題は「トロッコ問題」と本質的には同じです。
トロッコ問題では、1人を犠牲にして5人を救うことを選ぶ人が多数派でした。
しかし、この臓器くじでは、1人を犠牲にして5人を救うという選択をする人は、少数派になります。
もちろん、これは思考実験なので、どちらが正しいかの正解はありません。
ですが、1人の男を殺して、臓器を奪い取る行為は悪だとする感覚が一般的なのではないでしょうか。
功利主義者の考え方
多くの人の感覚だと、健康な男を殺して、5人の病人に臓器を分け与えることは、受け入れがたい行為です。
自分の身に置き換えて考えてみると、自分の体は健康にも関わらず、5人の病人のために命を落とすのは嫌でしょう。
しかし、中には臓器くじにおいて、1人の男を殺し、5人の患者を救うことが正しいと主張する人もいます。
そうした人は、単純に救われる人の数を計算し、結論を導き出しています。
1人の命より、5人の命の方が重いと考えている訳です。
こうした考え方は、功利主義と呼ばれます。
以下の記事でも紹介していますが、 功利主義は、最大多数の最大幸福に繋がる行為が、社会にとって良い行いだとする考え方です。
臓器くじの例では、単純に1人の命を救うことより、5人の命を救うことの方が、社会全体の幸福の総量は大きいです。
そのため、功利主義者は迷わず、健康な男の臓器を患者に分配することを選ぶのです。
何度も言いますが、どちらが正しいかの答えは誰にもわかりません。
見方や考え方によって、正義とは何かが変わっていくのが、こうした思考実験の面白いところです。
日常会話での使用方法
「臓器くじ、絶対5人を助けた方がいいよ」
「じゃあ今すぐ君の臓器を配ってくるんだな」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。