公平なコインを10回投げたら、表が7回、裏が3回。では、次は裏が出やすくなるでしょうか。
いいえ。各回が独立なら、次に表が出る確率も裏が出る確率も1/2です。大数の法則は、過去の偏りをコインが取り返す仕組みではありません。「平均や割合」に注目すると、違いが見えてきます。
目次
大数の法則は、たくさんの結果の平均についての話
基本的な形では、同じ分布に従う独立な試行を繰り返すと、結果の平均が期待値へ近づきます。期待値など一定の条件を満たす必要があり、何でも大量に集めれば同じ値になるわけではありません。
公平なコインでは、表を1、裏を0として平均すると、「表の回数÷投げた回数」になります。この平均が、表の確率1/2に近づくことを考えられます。定理の条件と式は、ProbabilityCourseの大数の法則で確認できます。
同じ「表が2回多い」でも、割合は違う
次は違いを示すための数値例です。実際に投げた観測結果ではありません。
| 投げた回数 | 表 | 裏 | 表の割合 |
|---|---|---|---|
| 10回 | 6回 | 4回 | 60% |
| 100回 | 51回 | 49回 | 51% |
| 1,000回 | 501回 | 499回 | 50.1% |
どれも表と裏の回数の差は2回。でも、全体に対する割合の差は小さくなっています。回数の差が必ずゼロへ戻らなくても、割合は1/2へ近づけます。
実際の系列では、回数の差が大きくなることもあります。近づく対象は「表と裏の回数が完全に一致すること」ではなく、表の割合です。
表が続いても、次に裏が出やすくならない
表が5回続いた後も、独立な公平コインの次の表の確率は1/2です。コインは過去の結果を覚えていません。
「長い目では半々だから、今から裏が多く出て帳尻を合わせるはず」と考えると、過去と未来を混ぜてしまいます。将来の投げ方に裏への特別な偏りが生まれなくても、最初の5回が全体に占める割合は、投げる回数が増えるほど小さくなります。
これが「平均が近づく」と「次の結果が偏りを取り返す」の違いです。
試行を増やせば、毎回少しずつ近づく?
大数の法則は、割合が一回ごとに必ず1/2へ近づくという意味ではありません。表が続けば、一時的に遠ざかることもあります。
弱い大数の法則では、平均との差が一定以上になる確率が、回数を増やすと小さくなることを述べます。「1,000回なら必ず正確に50%」という保証ではないのです。
サイコロやコインの短い実験で、理論値からずれた結果が出ても、それだけで不公平だとは決められません。ずれの大きさと回数を一緒に見る必要があります。
円周率を近似する、点打ちのモンテカルロ法
一辺1の正方形の中に、位置を一様・独立に選んで点を打つとします。左下を原点として、座標x、yはどちらも0から1です。
x²+y²≤1を満たす点は、半径1の円の四分の一に入ります。正方形の面積は1、四分円の面積はπ/4なので、その範囲に入る確率はπ/4です。
- 正方形の中に点をN個打つ。
- 四分円に入った点をX個数える。
- 4×X÷Nを計算する。
点が多くなるとX/Nがπ/4に近づくため、4X/Nを円周率の近似値として使えます。たとえば説明用に、1,000点中785点が入ったなら、4×785÷1,000=3.14です。有限回の計算なので、πと完全に等しくなるわけではありません。
たくさん集めても、偏った集め方は直らない
アプリを長く使っている人だけに、使い始めの分かりやすさを尋ねたとします。その人たちを何万人集めても、初回でやめた人の経験は入ってきません。
量を増やすことと、知りたい対象に合う集め方をすることは別です。こうした見落としは、生存者バイアスとも関係します。
次の一回と、たくさんの平均を分けて考える
次の一回は、どちらにも転びます。一方、多くの独立な試行をまとめた平均には、一定の条件のもとで安定する性質があります。
この二つを分けると、偶然を必要以上に怖がらず、数字を必要以上に信用せずに読めます。箱を変えると当たりやすいモンティホール問題でも、理論上の確率と短い実験の結果を分けて眺めてみてください。
コインを投げて、大数の法則を確かめる
各回に独立して表が50%で出るコインを、疑似乱数で再現します。毎回、新しい試行を最初から行います。実物のコインの測定や、法則の数学的証明ではありません。
50%へ一直線に近づくわけではなく、途中で離れることもあります。割合の差が小さくなることと、表と裏の回数の差が小さくなることも別です。直前に表が続いても、この設定では次に表が出る確率は50%のままです。
一つの系列と、取り直した標本を比べる
このページのコイン教材は、一つの系列の途中で割合がどう動くかを描きます。一方、標本平均を取り直す教材は、同じ回数の試行を20組作り、平均どうしのばらつきを比べます。「回数を増やす」と「同じ回数を何組も作る」を別々に操作できます。
基本となる独立同分布の設定では、有限な期待値を持つことなど、定理の条件が必要です。標本数が多くても、対象が偏った集め方や時間による分布の変化まで自動的に消えるわけではありません。
