不完全性定理:数学は完璧でない?(知的な小話177)

ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。

不完全性定理とは

不完全性定理とは、オーストリアの数学者であるゲーテルが証明した、ある理論体系の中の不完全性を示す2つの原理です。

ゲーテルは不完全性定理によって、数学が完璧でないことを証明しました。

定理1: ある矛盾の無い理論体系の中に、肯定も否定もできない証明不可能な命題が、必ず存在する

定理2: ある理論体系に矛盾が無いとしても、その理論体系は自分自身に矛盾が無いことを、その理論体系の中で証明できない

つまり、数学理論の中には証明ができない部分が存在する上、どんなに正しい証明をしたとしてもその数学の証明の正しさは数学では証明できないということになります。

自己言及のパラドックス

不完全性定理をわかりやすくイメージするために、しばしば自己言及のパラドックスが例として挙げられます。

自己言及のパラドックスとは、例えば「私は嘘つきだ」といった一文に包含される矛盾です。

私が正直者だった場合、この一文は正直者が嘘つきだという宣言をしているため誤りになります。

また、私が嘘つきだった場合でも、嘘つきが正直に自分を嘘つきだという宣言をしているため誤りになります。

よって、「私は嘘つきだ」という一文は、肯定も否定もできない命題だと言えます。

自己言及のパラドックスのその他の例としては「全知全能のパラドックス」や「人食いワニのパラドックス」が有名です。

同様に「私は正直者だ」という一文について考えてみます。

この場合、私が本当に正直者で、純粋に自分が正直者だという宣言をしている可能性があります。

一方で、私は本当は嘘つきで、嘘つきが嘘として自分が正直者だという宣言をしている場合も考えられます。

「私は正直者だ」という一文も、肯定も否定もできない不確定の命題だということになります。

このように、論理学という完璧に見える理論体系の中にも、証明不可能な命題が含まれます。(定理1)

また、理論体系の中に証明不可能な命題が含まれる以上、その理論体系の正しさを自身で証明することは不可能でもあります。(定理2)

ゲーテルは、人間が完璧な理論体系を作り出すことが不可能であり、我々が心理に到達することはない、ということを数学的に証明したのです。

日常会話での使用方法

「お前、数学のテスト0点だったらしいな!」

「あんな不完全な学問、勉強する価値がないのさ」



本サイトで紹介している用語一覧は以下です。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です