ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
ヘンペルのカラスとは?
ヘンペルのカラスとは、真である命題の対偶は必ず真であることの、直観との乖離を示した例です。
論理学のルールとして、「AならばBである」という命題が真であるとすると「BでなければAでない」という対偶も必ず真となります。
また、命題と対偶は正反対の関係にあるため、対偶が真なら、命題も真になります。
例えば、ある命題と対偶の例は以下の通りで、命題が正しければ、対偶は常に正しいですし、対偶が正しければ、命題も正しいです。
命題①:バナナは美味しい
対偶①:美味しくなければ、バナナでない
命題②:ダウンタウンは面白い
対偶②:面白くなければ、ダウンタウンでない
命題③:A君だけがテストで100点を取った
対偶③:テストで100点を取っていなければ、A君でない
その他の例として「全てのカラスは黒い」という命題の対偶は「全ての黒くないものはカラスでない」となります。
ここで、対偶が真であることを示せば、命題も真であることを同時に証明できます。
つまり、全てのカラスが黒いことを証明するには、全ての黒くないものがカラスでないということを示せば良いことになります。
その結果、世界中の黒くないものを順番に全て調べ、それがカラスでないことを示せば、カラスを1羽も調べることなく「全てのカラスは黒い」ことを証明できてしまうのです。
命題が真なら対偶が真であることの証明
ここでは、真である命題の対偶がなぜ真になるのか考えてみたいと思います。
命題④:AならばBである
対偶④:Bでなければ、Aでない
上記の命題④は「AはBに含まれる」と言い換えることができ、図で表すと、以下のようになります。
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そして、その対偶である、対偶④「Bでなければ、Aでない」は「Bでない部分は、Aに含まれない」と言い換えることができます。
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命題④が真であることから、Bの方がAよりも大きく、Aを完全に含むため、Bでない部分はAに含まれないという対偶も必ず真になります。
命題が真であれば、対偶が必ず真であることは、直観的には受け入れがたいですが、図で示せば理解しやすいです。
対偶が真であることは、ヘンペルのカラスでも同様に当てはまり、全ての黒くないものを示す過程でカラスが現れていないことから、カラスは黒いものであることが導きだせるのです。
最初に聞いたときは違和感のあったヘンペルのカラスも、今では比較的すんなりと受け入れられたのではないでしょうか。
日常会話での使用方法
「カラスが黒いことを知るのに、世界中のカラス以外のものを調べれば、カラス自体を調べなくていいんだってよ」
「ググった方が早くね」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。