ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
アッシュの同調実験とは
アッシュの同調実験とは、アメリカの社会心理学者であるソロモン・アッシュが行った、人は誤りが明らかな場合でも、周囲の行動に同調してしまう傾向があることを示した実験です。
以下のサンプルの線と同じ長さの線はA、B、Cのどれでしょうか。
Bと答えた方は正解です。
ほとんどの方がBだと答えたのではないでしょうか。
アッシュが行った実験でも、同様の結果が得られています。
しかし、その後アッシュは同様の図を用いて追加の実験を行います。
その内容は、被験者とは別にサクラを多数用意し、サクラに先に誤った回答をさせてから被験者に回答を聞くというものです。
サクラが次々に「Aがサンプルと同じ長さだ」といった誤った内容を答えると、結果として約30%の被験者がサクラに同調し、誤った回答をしてしまいました。
1人で考えれば間違えないような問題でも、他の人が次々に自分とは異なる回答をすると、「自分が見間違えているのではないか」「皆が言うのだからAが正しいのではないか」という考えに行き着いてしまうのでしょう。
この実験は「長い物には巻かれろ」という言葉もあるように、人が他人に流されやすいことを示しています。
会議や議論が誤った方向に進んでいるように感じながらも、反対意見を言い出せなかったという経験がある方も多いのではないでしょうか。
また、同調に関するその他の心理効果として、ある物事が多数に受け入れられている、流行っているという情報が流れることで、その物事への支持がより強くなるという、バンドワゴン効果もあります。
ユダヤ人の大虐殺も同調によるもの?
「文藝春秋」や「文春オンライン」では、ナチスが行ったユダヤ人の大量虐殺も、こうした同調効果によるものだとしています。
真っ当な思考をしていれば、大勢のユダヤ人をガス室送りにしたり人体実験を行ったりといった非人道的な行為を、組織的に粛々と実行することはできないはずです。
しかし、集団による同調効果が働けば、自分1人で考えれば明らかなはずの線の長さを間違えてしまったように、誤った方向に向かってしまうことも不思議ではありません。
また同調効果に加え、人には集団になると危険な思想や行動に行き着きやすいという、リスキーシフトの傾向があります。
そうした過激な思想への傾倒とそれに対する同調が同時に起きると、非常に危険です。
社会の中で生活する上で、他人に合わせて生きることは必要なことですが、思考を停止して同調するのではなく、一旦自分の頭で考えてみることも重要でしょう。
日常会話での使用方法
「俺はタピオカの列なんて並ばないぞ!」
「アッシュの同調実験の結果に抵抗してるな」
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