『黒いマヨネーズ』を読んで考えた、ギャンブルと期待値の落とし穴

ブラックマヨネーズの吉田敬さんが書いた『黒いマヨネーズ』を読みました。共感する話もあれば、首をかしげる話もある。でも、そのどちらも含めて面白い一冊でした。特にギャンブルの話から、運と判断、そして期待値について考えさせられました。

納得するかどうかとは別に、考え方が面白い

『黒いマヨネーズ』は、吉田さんの視点で世の中を切り取るエッセイ集です。私が楽しんだのは、誰にでも当てはまりそうな正論より、その人ならではの物の見方が出てくるところでした。

ギャンブルについても、運に任せるだけの遊びと、自分の判断が関わる遊びを分ける視点が印象に残りました。ここから先では、本の感想を入口に、私なりに計算と判断の違いを整理してみます。

判断が関わっても、利益を保証できるわけではない

ポーカーや麻雀では、状況に応じた選択で結果の分布が変わります。競馬でも、どの結果をどれほど起こりやすいと見積もるかが判断に関わります。ただし、判断の余地があることと、自分が利益を出せることは別です。

判断がうまくなっても、対戦相手がもっと強いことがあります。手数料や運営側の取り分もあります。情報を集めているつもりで、都合のよい例だけ覚えていることもあります。「考えているから、運だけの人より勝てる」とは限りません。

完全に運任せか、完全に実力勝負かという二分法より、何を自分で変えられ、何を変えられないかを分ける方が役立ちそうです。

期待値は、「その回に出る結果」ではない

公平な六面サイコロの出目の期待値は、(1+2+3+4+5+6)÷6=3.5です。3.5の目が出るわけではありません。各結果を起こる確率で重みづけした平均です。

また、期待値と最も出やすい値は違います。サイコロ一個なら各目は同じ確率です。二個の合計で7が最も出やすいのは、7になる組み合わせが六通りあるからです。期待値が7というだけで、最頻値も7と分かるわけではありません。

ジャンケンなら、払戻額と純利益を分ける

計算用の架空の勝負を考えます。勝ち・あいこ・負けがそれぞれ3分の1で、勝てば10,000円、あいこなら2,000円、負ければ0円を受け取ります。参加費は2,000円です。

結果受け取る額参加費を引いた純利益
勝ち10,000円+8,000円
あいこ2,000円0円
負け0円−2,000円

受取額の期待値は、(10,000+2,000+0)÷3=4,000円。純利益の期待値は、4,000−2,000=2,000円です。受取額の期待値を参加費で割った比率は2になりますが、金額の期待値そのものが2円ということではありません。

ここで儲かる結果は「勝ち」だけなので、その確率は3分の1です。期待純利益がプラスでも、儲かる確率が半分を超えるとは限りません。

めったに当たらない勝負でも、期待値は高くなれる

もう一つ、参加費100円、100分の1の確率で20,000円、それ以外は0円という架空のくじを考えます。受取額の期待値は200円で、純利益の期待値は100円です。それでも一回では、99%の確率で100円を失います。

大きい利益が低い確率で起こると、平均はプラスでも、多くの回では負けます。期待値は平均についての情報であって、結果のばらつきや、負けが続く長さを全部表す数字ではありません。

「何度も続ける」にも条件がある

同じ条件の独立した試行を十分繰り返すと、平均は期待値に近づく性質があります。しかし、有限回で必ず利益に転じる、という意味ではありません。条件が変わる、確率の見積もりが外れる、資金が尽きて続けられなくなる、といった問題もあります。

先ほどのくじで、一回目から20回連続で外れる確率は0.99の20乗、約81.8%です。参加費だけで2,000円を使っても、一度も当たらないケースは珍しくありません。プラスの期待値と、途中の苦しさは両立します。

負けた後に賭け金を増やすマーチンゲール法も、この資金と連敗の問題を消してくれる方法ではありません。

私が作った予想ツールでも、問題は確率だった

私はExcelとVBAで競馬予想ツールを作ったことがあります。計算を自動化しても、当たる確率の置き方が正しいとは限りません。過去500レースでの検証では、回収率は約83%でした。

式を正しく動かすことと、その式へ入れる数字が現実を表していることは違う。この経験は、期待値を「必勝法」のように扱わないための、具体的な材料になりました。

読後に残ったのは、結果より判断を見る視点

たまたま勝っただけで、判断まで正しかったとは限りません。逆に、一回負けたからといって、計算のすべてが間違いだったとも言えません。結果と、その結果に至る判断を分けて振り返る視点は、ギャンブル以外にも使えます。

私は『黒いマヨネーズ』を、正解を教えてくれる本というより、自分の考えを動かしてくれる本として楽しみました。期待値は役立つ道具ですが、楽しさ、使う時間、失って困る金額まで、ひとつの数字が代わりに決めてくれるわけではありません。

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