みんなが賛成している案に、あえて反対の立場から質問する。悪魔の代弁者とは、そんな議論の役割です。案を邪魔するためではなく、見落としている条件や、説明の弱い部分を見つけるために使えます。
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反対役は、本人の意見と同じとは限らない
「この案に反対するとしたら、どんな理由があるだろう」。悪魔の代弁者は、実際にその案を嫌っている必要はありません。検討のために、別の立場を引き受けます。
賛成する理由ばかりが積み上がると、失敗したときの条件を考えにくくなります。そこで、利用者が違う場合、時間が足りない場合、費用が増える場合などを尋ね、案がどこまで成り立つかを確かめます。
言葉の背景は、聖人の認定をめぐる審査
この呼び名の背景には、カトリック教会で列福・列聖の候補に関する疑問や反論を検討する役割があります。奇跡や徳についての説明を慎重に調べる担当者が、「悪魔の代弁者」と通称されました。聖職者一般を採用する際の役職、という意味ではありません。『カトリック百科事典』Promotor Fidei
そこから日常の議論では、あえて反対側から案を点検する人を指すようになっています。名称は強烈ですが、実際に必要なのは意地悪な態度より、確かめるべき問いです。
競技ディベートで学んだ、意見と役割の違い
私は学生時代、競技ディベートの活動をしていました。論題に対する肯定側と否定側の議論を準備すると、自分が賛成している政策にも、相手側からの疑問があることを考えさせられます。
本人の考えと、競技で主張する立場は必ずしも一致しません。ある立場の理由を説明できることと、その立場を支持することは違います。
この区別は、普段の話し合いにも役立ちます。反論を聞いたとき、「自分を否定された」と受け止める前に、案のどの前提を尋ねられているのかを見る。相手側の理由を一度、自分の言葉で説明してみると、応答すべき点がはっきりします。
アプリの企画を点検するなら、こう質問する
架空のゲームに、毎日遊ぶと報酬がもらえる機能を追加するとします。「毎日起動するきっかけになる」という賛成意見に対し、反対役は次のように尋ねられます。
- 毎日遊べない人は、損をしたように感じないか。
- 報酬を受け取るだけで、ゲームを遊ばない状態にならないか。
- 利用者が求めているのは、毎日の習慣か、気が向いたときの遊びか。
答えを考えると、週単位の報酬にする、連続日数を条件にしない、機能を付けない、といった選択肢も出てきます。反対意見から、新しい案が生まれることもあるわけです。
役に立つ反論と、ただの攻撃を分ける
「作った人にセンスがない」では、案を改善する材料になりません。「初回の説明だけでは、何を押せばよいか分からない」なら、確認する場面と変更する対象が見えます。
反対役を頼むときは、目的と範囲を先に共有すると進めやすくなります。「5分だけ、初めて使う人の立場で疑問を出してほしい」のように具体的にします。最後には、指摘を受けて何を変えるか、何を試すかまで決めましょう。
意見が言いにくい場の問題は、沈黙の螺旋にもつながります。反対役が一人いることに加え、ほかの人も話せる場を作ることが大切です。

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