小・中・大の飲み物から、なんとなく「中」を選ぶ。安いプランでは物足りず、高いプランは使い切れない気がして、真ん中に落ち着く。そんな「ちょうどよい」を表す比喩として、ゴルディロックスという名前が使われます。ただし、ちょうどよいものが、いつも数字の真ん中とは限りません。
名前の由来は、3匹のくまの童話
ゴルディロックスは、『ゴルディロックスと3匹のくま』に登場する少女の名前です。熱すぎるものと冷たすぎるものではなく、ちょうどよいおかゆを選ぶ物語から、過剰でも不足でもない、条件がほどよく合う状態の比喩になっています。
「ゴルディロックスの原理」という言い方は、心理、学習、経済、天文学などの話で使われます。分野ごとに対象が違うため、一つの万能な法則として読むより、何が「ちょうどよい」のかを見ると理解しやすくなります。
松竹梅効果と、研究でいう妥協効果
商品の選択では、高級・中間・低価格の選択肢を並べると、中間が選ばれやすくなる場合があり、松竹梅効果などと呼ばれます。関連する研究用語が、妥協効果です。
サイモンソンとトヴェルスキーは、選択肢の組み合わせが変わり、ある商品が中間の位置になると、その選ばれ方も変わる例を報告しました。商品単体の魅力だけでなく、何と並べて比べるかが判断に影響するという話です。1992年の研究『Choice in Context』
ここでいう中間は、画面の中央という意味だけではありません。価格と性能など、比較する特徴の間で、極端ではない位置にある選択肢を考えます。
架空の料金プランで考える
写真を保存するサービスに、次のプランがあるとします。料金も容量も、説明用の架空の数字です。
| プラン | 月額 | 保存容量 |
|---|---|---|
| 小 | 300円 | 10GB |
| 中 | 600円 | 30GB |
| 大 | 1,200円 | 100GB |
大きなプランが加わると、中のプランが「高すぎず、少なすぎない」ように見えるかもしれません。しかし、実際に必要な容量が5GBなら、小でも足ります。月に80GBを使うなら、中では不足します。
並びの中で無難に見えることと、自分に合うことは別です。人が松・竹・梅を必ず決まった比率で選ぶわけでも、3択がどんな商品にも最適なわけでもありません。
買う側と、作る側の使い方
買う側なら、選択肢を見る前に「必要な機能」と「使える金額」を書いておくと、中間という位置だけに頼らずに比べられます。一番安いものを選ぶことも、高いものを選ぶことも、目的に合っていれば自然な判断です。
作る側なら、比較しやすい単位で違いを示し、各プランが誰に向くのかを伝えます。売りたい商品を無難に見せるだけより、選んだ後に使い切れる内容を案内したいところです。料金や条件を隠す設計は、ダークパターンにもつながります。
宇宙で使う「ゴルディロックス領域」
天文学では、恒星の周囲で、適切な大気などの条件があれば惑星の表面に液体の水が存在しうる距離の範囲を、ハビタブルゾーン、あるいはゴルディロックス領域と呼びます。NASAの説明
この範囲にあるだけで、水や生命の存在が確認されたことにはなりません。商品の中間を選ぶ心理とも、仕組みは別です。共通しているのは、「熱すぎず、冷たすぎず」という童話の比喩。「ちょうどよい」を考えるときは、何にとってよいのかまでセットで考えてみましょう。
