顔の一部が隠れた写真を見ると、見えていない部分を想像することがあります。好きな人について、まだ知らないところまで素敵だと思うこともあるでしょう。どちらも限られた情報から印象が作られる場面ですが、「補って想像すること」と「理想的に評価すること」は同じではありません。
心理学でいう理想化の意味
理想化は、人や物の良いところを大きく評価し、欠点を小さく見て、ほぼ完璧なものとして捉えることを指します。米国心理学会の辞典でも、そのような意味と、精神分析での防衛機制としての意味が説明されています。APAのidealizationの項目
たとえば、憧れの人物の成果を見て「この人なら、どんなことでも間違えない」と思う場合。知っている長所から、知らない部分まで肯定的に広げているのがポイントです。何かを好きになること自体が、すべて理想化になるわけではありません。
図形の隠れた部分は、どう見える?
次の図を見ると、灰色の図形の後ろに、白い長方形が続いているように感じるかもしれません。

しかし、見えている部分だけでは、隠れた場所を一意に決められません。別の形や模様も、同じ見え方を作れます。
隠れた部分の別の可能性を見る

このような形の補完は、必ずしも「最も美しいもの」を想像しているわけではありません。輪郭の続きを自然につなぐことと、相手を理想的な人物として評価することは、分けて考えられます。
マスクを着けると、顔の印象は変わるのか
マスクが顔の魅力の評価に与える影響は、実験でも調べられています。2021年の日本の研究では、感染症の流行前後で、マスクを着けた顔への評価や、マスクに対する連想が変わったと報告されています。顔の魅力とマスクに関する研究
また、2022年にカーディフ大学が紹介した研究では、43人の女性が40人の男性の顔画像を評価し、青い医療用マスクの条件が、ほかの条件より魅力的に評価されました。研究を行った大学の説明
ここでわかるのは、一定の条件で、覆い方が印象に影響したということです。顔が隠れたことに加えて、マスクから連想する健康や医療のイメージも考えられます。「隠れた部分を理想の顔で埋めるから」と、一つの説明だけで決まる話ではありません。
写真から、相手の意図まではわからない
顔を隠した写真には、好みの構図、プライバシー、撮影時の事情など、いろいろな理由が考えられます。写真だけを見て「見た人をだますため」と決めることはできません。
また、研究での魅力の評価は、写真を見る人の判断を測ったものです。その人自身の価値や、性格の良さを測っているわけではありません。見え方と、相手について知っていることは区別したいところです。
想像を楽しみながら、事実と分ける
小説の人物や、まだ遊んでいないゲームへの期待には、想像する楽しさがあります。想像をなくす必要はありません。ただ、実際に確かめたことと、期待から補ったことを分ければ、印象のずれにも気づきやすくなります。
一つの好印象が別の評価へ広がる話に興味があるなら、ハロー効果も読んでみてください。見えている一部から全体を捉える心の働きを、別の角度から考えられます。
