ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
アウフヘーベンとは
アウフヘーベンとは、ドイツの哲学者であるヘーゲルが弁証法の中で提示した考え方で、矛盾する2つの要素を組み合わせて発展的に統一することを指します。
アウフヘーベンは日本語で止揚(しよう)とも呼ばれます。
例えば、Aさんが「車に乗りたい」という意見を持っており、Bさんは「車の排気ガスは環境に悪い」という意見を持っている場合、2人の意見は互いに矛盾しています。
ここで2つの対立する意見をアウフヘーベンするなら「環境に良い電気自動車に乗る」といった結果が考えられます。
このように、どちらかを妥協させるわけでも屈服させるわけでもなく、互いの意見を活かして1つの結論に向かうような考え方がアウフヘーベンです。
テレビ番組で行われる議論や討論は相手を論破して言い負かすことを目標としていますが、本来ディベートはこうしたアウフヘーベンのために行うものです。
結論ありきで互いに意見をぶつけ合うのではなく、互いの意見を踏まえて最も良い結論を導き出すのが、議論のあるべき姿です。
あえて反対意見を述べることで議論を円滑に進める悪魔の代弁者も、アウフヘーベンのための役割だと言えます。
弁証法とは
弁証法は、世の中の事物の本質を理解するための手法と言われます。
弁証法という言葉は古代ギリシアのことから存在し、ソクラテスによる問答法(もんどうほう)が始まりです。
ソクラテス式問答法は、反対の立場を取る個人間による討論の形式で、互いに質問と回答を繰り返すことで、自分の意見の補強を行ったり、相手の意見の矛盾に気付かせたりします。
こうした討論によって、新しいアイデアや深い思考を行うことを目的としています。
ソクラテスは相手に「なぜ?」「どうして?」と質問を繰り返すことで、相手に無知を自覚させようとしました。
人は長く生きていると全てのことが「わかった」気になってしまいますが、それでは新たな学びは得られず、自分が無知だと知っている状況(=無知の知)を作り出す必要があります。
質問を繰り返すことで相手の考えや思いを発掘する方法は、カウンセリングの分野でも応用されています。
日常会話での使用方法
「お前とは全く意見が合わん!」
「アウフヘーベンしていこうぜ!」
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