みんなで協力すればよい結果になるのに、一人ずつ選ぶとうまくいかない。外出自粛をめぐる議論には、こうした社会的ジレンマが表れていました。ゲーム理論を使うと、人を一言で責める前に、選択の仕組みを考えられます。
ゲーム理論は、相手の選択も含めて考える
ゲーム理論は、複数の参加者の行動が互いの結果に影響する状況を分析します。自分にとって何が得かは、他の人がどう動くかにも関わります。
外出自粛のような話では、協力する負担は個人にかかる一方、その利益は社会に広がることがあります。自分だけが負担を避け、ほかの人の協力から利益を得たいという動機を、フリーライダーの問題として考えられます。COREの社会的相互作用の教材でも、公共財と協力の関係が扱われています。
まずは、架空の二人のゲームで考える
ここでは現実の感染の数値を推定せず、協力の構造を示すための架空の点数を使います。AとBが、それぞれ「協力する」「協力しない」を選ぶとしましょう。点数は、得られる利益から負担を引いた満足の尺度です。
| Aの選択 | Bの選択 | Aの点数 | Bの点数 |
|---|---|---|---|
| 協力する | 協力する | 3 | 3 |
| 協力する | 協力しない | 0 | 4 |
| 協力しない | 協力する | 4 | 0 |
| 協力しない | 協力しない | 1 | 1 |
Bが協力するなら、Aは協力しないほうが4点で、協力したときの3点より高くなります。Bが協力しない場合も、Aは協力しないほうが1点で、0点より高くなります。Bから見ても同じ関係です。
自分の点数だけを最大にするなら、二人とも協力しない選択へ向かいます。ところが結果は1点ずつで、二人とも協力した3点ずつより低くなります。これは囚人のジレンマの形です。
現実の外出は、二択より複雑
現実には、仕事、通院、買い物など、生活のための外出があります。家で過ごす際の負担や、利用できるサービスも人によって違います。同じ「外へ出た」という行動でも、背景を一つにまとめることはできません。
また、実際の感染リスクは人数や接触の条件などに関わります。上の点数表は、人の性格や感染の仕組みを測った結果ではありません。「個人に見える利益と、みんなで得られる結果がずれる」という構造を取り出したモデルです。
協力を求めるなら、協力できる条件も考える
このモデルから考えられるのは、呼びかけの言葉だけでなく、選択の負担を変えることです。たとえば、在宅で仕事をできる仕組み、必要なものを受け取る手段、休める条件などがあれば、協力するときの負担は変わります。
相手の状況を知らずに「協力するか、しないか」だけを見ると、協力したくても難しい人と、負担を避けて利益だけ受け取ろうとする人を混同してしまいます。何が障害なのかを分けるほうが、取り組みを考えやすくなります。
一度の選択だけでは、関係は終わらない
同じ人たちが繰り返し関わるなら、信頼、約束、今後の関係も選択に入ります。自分の点数に他人の利益も含める人なら、同じ表を使うこともできません。参加者が何を大切にしているかによって、ゲームの形は変わります。
ゲーム理論は「人は必ず自分勝手だ」と証明する道具ではありません。どの前提ならどの選択が起きやすいかを見て、その前提を変えられないか考える道具です。社会の協力を扱うときにも、人への評価と、協力の仕組みを分けて見ることが役立ちます。
