ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
4つのイドラとは
4つのイドラとは、イギリスの哲学者であるフランシス・ベーコンが提唱した、人間が陥りやすい偏見や思い込みの分類を指します。
ベーコンは「知識は力なり」という言葉を残し、実験や観察から得られた事実によって法則を導き出すことができると考えました。
しかし、人間は誤解や先入観によって正しく事実を受け止めることが難しいとしています。
ベーコンは、そうした事実の観察の際に注意すべき思い込みをイドラと呼び、4つに分類しました。
種族のイドラ
種族のイドラは、人間という生き物が生まれながらにして持っている思い込みを指します。
種族のイドラは人間の感覚によって引き起こされ、全ての人類に共通する誤りです。
例えば、以下図の2本の直線は同じ長さですが、脳の錯覚によって上の直線が長く、下の直線が短く感じます。
このように、人間の感覚の誤りによって、事実を正しく観察することができない場合があります。
洞窟のイドラ
洞窟のイドラは、個人の人生経験の中から生じる思い込みを指します。
目の前に同じ事実があったとしても、これまでどんな環境で育ったか、どんな教育を受けたか、どんな体験をしてきたかによって感じ方が異なります。
例えば、ノートルダム大聖堂が火事になったという事件があった時、自身の信じる宗教や、歴史に関する知識、住んでいる国などによってどういった印象を持つかは異なるでしょう。
大火事を神の怒りだと感じる人もいるでしょうし、歴史的遺産の喪失だと感じる人もいるでしょう。
知識が何もなければ、ただの大きな建物の火事だと感じるかもしれません。
このように、同じ事実でも個人の経験によって受け止め方が異なる場合があるのです。
言語のイドラ
言語のイドラは、言葉が不正確であることによって生じる誤解です。
社会的な生活の中で、人は言語を通じて他者と交流します。
しかし、言語は完全でなく、思考を相手に完璧に伝えることはできません。
誤用や誤解によって誤った情報が伝えられることもあります。
こうした言葉の不完全性によって誤解が生まれることもあります。
言語のイドラは市場のイドラとも呼ばれ、噂話やゴシップなどもこれに当たります。
劇場のイドラ
劇場のイドラは、権威や伝統を無批判に信じることによって生じる誤りです。
中世にカトリック教会が主張しているからという理由で、天動説を信じ切っていた人々は、劇場のイドラによる偏見によって事実を見誤っていたと言えます。
今の目線から言えば地動説が正しく、天動説は馬鹿らしく思えますが、当時権威のある人が真面目に主張していれば、信じ切ってしまっても無理はありません。
権威のある思想家が舞台の上で繰り広げる華やかなドラマを妄信してしまう様子から、劇場のイドラと呼ばれています。
日常会話での使用方法
「先生が言ってたから絶対正しいに決まってる!」
「それは劇場のイドラに騙されちゃってるよ」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。