ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
ローボールテクニックとは
ローボールテクニックとは、はじめに簡単な要求を受け入れさせて、後で相手によって不利な条件を追加することで、受け入れづらい要求を受け入れさせるという心理学的なテクニックです。
例えば、「明日空いてる?」という友達の誘いに「空いてるよ」と答えた後で、「実はバイト変わってほしいんだけど…」と言われた場合、ローボールテクニックの罠にハマっていると言えます。
はじめに予定が空いているかの確認で「YES」と言わせて、後から条件を付け加えることで、単純に最初からバイトを変わってほしいと依頼をした場合よりも、断りづらくすることができるのです。
似たようなテクニックとして、フットインザドアテクニックがあります。
フットインザドアテクニックは、最初に小さな要求をし、その後に別の大きな要求をすることで後の要求の承諾率を上げようとする手法です。
ローボールテクニックは最初の要求に条件を追加するという方法であるため、相手にとってはより断りづらい状況にあると言えます。
チャルディーニによる実験
ローボールテクニックの有効性は、アメリカの心理学者であるロバート・チャルディーニの実験によって証明されています。
チャルディーニは、学生に対し、朝の7時に研究の手伝いのために大学に来てもらうよう依頼しました。
依頼の方法は以下の2パターンです。
②はローボールテクニックを利用していますが、頼み方が違うだけでどちらも依頼している内容自体は同じです。
しかし、普通に依頼をした場合では学生の承諾率は30%だったのに対し、ローボールテクニックを利用した②の頼み方の場合では、56%の学生が依頼を受け入れました。
頼み方の違いだけで、相手の返答が2倍近く変わることがわかったのです。
実際の活用例
ローボールテクニックは日常の様々な場面に使うことができますし、逆に使われることもあります。
アパレルショップにて
洋服屋さんの店頭に、「店内商品80%OFF」と書かれた大きな貼り紙がしてある場合があります。
しかし、実際に入ってみると、80%OFFの商品はごく一部だけで、その他の商品はさほど安くないといったことはよくあります。
何も買わずに出ていくのも嫌なので、大して欲しくないものを買ってしまったという経験がある人も少なくないでしょう。
こうした場合、完全にローボールテクニックの罠にハマっていると言えます。
「店内商品80%OFF」という貼り紙は確かに嘘ではありませんが、店に入ってみると実は一部の商品だけが割引されているという追加の条件が後から明らかになります。
お店側としては、一部の商品を割り引くだけで、多くの客を店内に呼び込むことができるので、少しズルいですが有効な手法と言えます。
デートの誘いにて
ローボールテクニックは恋愛にも利用できます。
例えば意中の女性を飲みに誘う時、いきなり「2人で飲みに行こう」と誘うと断られてしまうかもしれません。
ですが、「今度〇〇も含めて3人で飲み行こう」と誘い、承諾を得てから当日に「ごめん、〇〇は来れなくなったけど、2人でいいよね?」と頼めば、相手は一度飲みに行くことを承諾してしまった手前、非常に断りづらいでしょう。
わざとやっていることがバレてしまうと逆効果なので、細心の注意を払って行う必要がありますが、こうした使い方も有効でしょう。
その他にも、店頭に好条件の存在しない物件を載せている不動産屋や、後から追加プランの加入が必要だと伝えてくる携帯ショップ、格安の看板にも関わらず法外なサービス料を請求するキャバクラ店など、ローボールテクニックは様々な場面で活用されています。
このように、ローボールテクニックは非常に有効である反面、逆に自分が使われた時には回避できるようにしておかなくてはなりません。
そのためには、後から条件を付けくわえられた時に、最初からその条件が知らされていたら自分はこの依頼を承諾するか、を冷静になって考えてみる必要があります。
また、怪しいと思った場合は、最初の依頼の時点で拒否をすることも重要でしょう。
日常会話での使用方法
「簡単な頼み事していい?」
「やだ!!」
本サイトで紹介している用語一覧は以下です。