ここでは、日常会話で使える知的な小話と、実際の使用例を紹介します。
アンカリング効果
アンカリング効果とは、人間は先行する情報によって後の判断が歪められてしまうという心理学的な現象です。
例えば、ある商品がそのまま1,000円で売られている場合よりも、5,000円から80%OFFで1,000円と値引きして売られている場合の方が、消費者はその商品を買いたいという気持ちを持ちやすくなります。
5,000円という先行する情報を与えられることで、その値段が商品を判断する際の基準となり、後で提示された1,000円という値段が相対的に安く思えるのです。
ちなみに、実際は5,000円で売っていないものを1,000円に値下げしているように見せかけると、景品表示法違反となるので、注意が必要です。
こうした効果は実験でも証明されています。
2つのグループに「国連加盟国の中で、アフリカの国の割合はいくらか」という同じ質問をする実験が行われました。
ただし、その質問の答えを聞く前に、1つ目のグループには「65%よりも大きいか小さいか」を訪ね、2つ目のグループには「10%より大きいか小さいか」を尋ねました。
そしてそれらの事前質問の後に、国連の中のアフリカの国の割合を聞くと、1つ目のグループには45%だと答える人が最も多くなり、2つ目のグループには25%と答える人が最も多くなったそうです。
この実験からも、人は事前の情報(ここでは〇〇%より大きいか小さいかという質問)によって、後の答えが左右されてしまうことがわかります。
先の情報に後の行動が影響を受けることから、プライミング効果(prime:先の)とも呼ばれます。
日常での応用
アンカリング効果は日常の様々な場面で活用できます。
例えば仕事の中で、3日間で終わりそうな作業を引き受ける場合のことを考えてみます。
ただその仕事を引き受けて、3日で完了しても、周りの人にこれといった印象は与えませんが、「1週間で終わらせます」と宣言してから3日で終わらせると、「思ったより早く終わったな」という印象が残り、優秀な社員だと思われやすいです。
また、部下に3日で終わる見込みの仕事を依頼する際も、「これ2日でできる?」と頼むと、2日という期間が基準となるため、単純に「3日でお願い」と頼んだ場合よりも、部下は早く仕事を終わらせようと努力します。
このように、事前に自ら基準を提示することで、周囲の印象を操ることができるのです。
ちなみに、「ピザ」と10回言わせてから「ヒジ」を指して名称を答えさせると「ヒザ」と言ってしまうような10回クイズも、事前情報に判断が歪められるという点で、アンカリング効果によるものと言えるかもしれません。
日常会話での使用方法
「この時計、定価1,000,000円のところが今なら10,000円ですよ~」
「さすがに嘘だろ」
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