負けたら次の金額を2倍にする。どこかで一度勝てば、それまでの負けを取り戻して100円が残る。マーチンゲール法は、こんな計算から必勝法のように見える賭け方です。ところが、増えるのは回収の可能性だけでなく、次に必要な資金と、途中で止まったときの損失でもあります。
目次
計算しやすい、架空の50%ゲームで考える
ここでは現実のカジノの条件から離れ、毎回独立に50%で勝ち、勝ったときの純利益は賭け金と同額、負けたときは賭け金を失うゲームを考えます。手数料はなく、最初の金額は100円です。
このゲームで、負けるたびに100円、200円、400円、800円と倍にしていきます。最初に勝ったところで止めるのが、基本の考え方です。
| 何回目で初めて勝ったか | その回の賭け金 | それまでの損失 | 差し引きの利益 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 100円 | 0円 | 100円 |
| 2回目 | 200円 | 100円 | 100円 |
| 3回目 | 400円 | 300円 | 100円 |
| 4回目 | 800円 | 700円 | 100円 |
例えば3回目に勝つと、純利益400円から、それまでに失った100円と200円を引き、100円が残ります。ここだけ見ると、いつ勝っても同じ利益になる、うまい仕組みに見えます。
13連敗すると、次に必要なのは81万9,200円
問題は、勝つまで続けられるかです。n回連続で負けたときの累積損失は100×(2のn乗−1)円。次の金額は100×2のn乗円になります。
| 連敗数 | 累積損失 | 次に必要な金額 |
|---|---|---|
| 5 | 3,100円 | 3,200円 |
| 10 | 102,300円 | 102,400円 |
| 13 | 819,100円 | 819,200円 |
| 14 | 1,638,300円 | 1,638,400円 |
最初に100万円を持っていたとしても、13連敗すると残りは180,900円。次に必要な819,200円を用意できず、倍賭けを続けられません。100円を得るはずだった一回の流れが、819,100円の損失で終わります。
資金が十分でも、一回に出せる金額に上限があれば止まります。例えば上限100万円なら、14連敗したあとの次の金額は上限を超えます。「いつか勝つ」という計算は、資金やルールによって、その前に続けられなくなるのです。
小さな勝ちが多くても、期待値はプラスにならない
この架空のゲームで、初めて勝つか、13連敗するかで一回の流れを終了するとします。13連敗する確率は(1/2)の13乗、つまり1/8,192です。それ以外の8,191/8,192の場合は100円の利益になります。
平均的な収支に当たる期待値は、次の計算です。
100×(8,191/8,192)−819,100×(1/8,192)=0円
ほとんどの流れでは100円の利益が出ます。それでも、まれに起きる大きな損失を含めると、期待値は0です。「勝った回数が多い」と「収支が有利」は、同じことではありません。
これは今決めた条件での計算です。現実のゲームに手数料や胴元の取り分などがあれば、その条件も収支に関わります。金額を倍にすること自体が、不利なルールを有利なルールに変えるわけではありません。
「次はそろそろ勝つ」は、別の思い込み
毎回独立に50%で勝つという設定では、何回負けても次の勝率は50%です。連敗したから、次が帳尻を合わせてくれることはありません。確率の条件を変えずに、金額だけが大きくなります。
ここで怖いのは、「次に勝てば取り戻せる」という計算が、引き際を遠ざけることです。過去の損失を取り戻したい気持ちと、これから引き受けるリスクは分けて考える必要があります。過去に払った費用で判断が引っ張られるコンコルド効果とも、つながる話です。
必勝法を見るときは、失敗する一回も数える
紹介されている成功例だけでなく、続けられなくなる条件、最大の損失、手数料、回数を含めて考える。マーチンゲール法は、その大切さをわかりやすく示します。小さく勝つ場面が多い仕組みほど、一度の大きな損失が見えにくくなることがあります。
損失を取り戻すために賭けを続けてしまい、生活に影響が出ている場合は、厚生労働省の相談先案内も利用できます。金額の計算が、やめられない状態を一人で解決する道具になるとは限りません。
