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「平均は上がったけれど、多くの人は変わっていない」「二つの数字が一緒に増えたけれど、原因は分からない」。統計の用語は、数字で何が分かり、何がまだ分からないかを整理する道具です。ここでは20の基本用語を、できるだけ同じ小さなデータでつなげます。
使うのは、架空の5人の1日の読書時間2・3・3・4・8分。実際の読書調査ではなく、手元でも計算できる説明用の例です。まず手元の5人を記述する話と、その5人からもっと大きな集団を推測する話を分けて読みます。
目次
統計用語8つの早見表
| 用語 | 答える問い | 今回の例 |
|---|---|---|
| 平均値 | 総量を均等に分けると? | 4分 |
| 中央値 | 並べた真ん中は? | 3分 |
| 最頻値 | 一番多く出る値は? | 3分 |
| 範囲 | 最大と最小はどれだけ離れる? | 6分 |
| 分散 | 平均からのずれを二乗してまとめると? | 4.4分²(5で割る) |
| 標準偏差 | 元の単位で散らばりを見ると? | 約2.10分 |
| 相関係数 | 二つの数値に直線的な関係がある? | 別の変数との組が必要 |
| 標本と母集団 | 調べた人と、知りたい全体は同じ? | 5人と、対象としたい集団を区別 |
1.平均値:合計を個数で割った値
5人の読書時間の合計は20分なので、平均値は20÷5=4分です。ここでいう平均は算術平均です。合計時間を全員へ同じだけ配るなら一人4分、と読み替えると意味がつかめます。平均と人数が分かれば、合計は4×5=20分と戻せます。
ただし、4分より短い人が3人います。「平均以下は半分」とは限りません。8分を28分に変えるだけで平均は8分になり、残り4人が変わらなくても代表する数字は大きく動きます。総量を見るときに便利な性質が、典型的な人を説明するときには注意点になります。
2.中央値:小さい順に並べた真ん中
2・3・3・4・8を小さい順に見ると、中央の3番目は3。これが中央値です。個数が偶数なら、通常は中央の二つの値を平均します。例えば2・3・4・8の中央値は(3+4)÷2=3.5分です。
最大値8を28に変えても、5人の中央値は3分のまま。端の値の大きさだけが動く場合には影響を受けにくい一方、全体の読書時間が増えたことは見えません。中央値だけで全体を説明し切ろうとせず、平均や最大・最小も一緒に見ると変化を取りこぼしにくくなります。
3.最頻値:最も多く現れる値
今回、3分が2回、ほかの値が1回ずつ現れるので、最頻値は3分です。「何分が一番よく出たか」を知りたいときに使います。好きなジャンルなど数値でない回答でも、最も多かったカテゴリーを探せます。
最頻値は一つとは限りません。2・2・4・4・8なら2と4が同率です。また、時間を秒単位で記録するか、10分ごとの区間にまとめるかで、最も多い値や区間は変わり得ます。「最頻値」と聞いたら、何を一つの値として数えたかも確かめます。
4.範囲:最大値と最小値の差
範囲は8−2=6分。散らばりの両端を短く伝えられます。ただし、間にある値を使いません。2・2・2・2・8も、2・5・5・5・8も範囲は6分です。最大と最小が同じでも、中心や集まり方まで同じとは言えません。
記録ミスで8が80になれば範囲は大きく変わります。極端な値は、まず入力・単位・測定条件を確認します。目立つからという理由だけで消すと、実際に起きている特徴まで取り除いてしまいます。
5.分散:平均からのずれを二乗してまとめる
平均4分との差は−2・−1・−1・0・4分です。そのまま足すと0になり、散らばりが打ち消されます。そこで二乗して4・1・1・0・16とし、合計22を5で割ると4.4。これが、この5人のデータを記述する分散です。
単位は「分²」になります。また、標本から母集団の分散を推定するときによく使う不偏分散では、5ではなく5−1=4で割り、5.5になります。数式の分母が違う場合は、目的を確かめてから比較します。
6.標準偏差:分散の平方根
分散4.4の平方根を取ると、標準偏差は約2.10分です。二乗した単位が元に戻るので、読書時間と同じ「分」で散らばりを表せます。全員が4分なら分散も標準偏差も0。平均は同じ4分でも、今回の5人とはばらつきが違います。
標準偏差は「全員が平均からこの距離以内にいる」という上限ではありません。今回、8分の人は平均から4分離れています。平均±標準偏差に一定割合が入るという説明は、分布の形などの条件付きで読む必要があります。
7.相関係数:二つの数値の直線的な関係
同じ5人について通勤時間も調べ、読書時間と一組ずつ対応させると、二つの変数の関係を調べられます。ここで扱うピアソンの相関係数rは−1から1。符号は向き、絶対値は直線へのまとまりを表します。
正なら一方が大きい人ほど他方も大きい傾向、負なら逆の傾向です。ただし、rが0でも曲線的な関係がある場合があります。大きな相関があっても原因とは限らないので、散布図・人数・集め方もセットで確認します。
8.標本と母集団:調べた一部と、知りたい全体
ある読書会の全員が5人なら、今回の5人は、その読書会を対象にする限り全体です。市内の読書時間を知りたいなら、同じ5人はその一部にすぎません。関心のある対象全体が母集団、そこから調べた一部が標本です。データの大小だけでなく、問いによって位置づけが変わります。
読書好きの集まりの5人から、市民全員をそのまま説明するのは難しいでしょう。人数を増やしても、同じ偏った集め方を続けるだけでは偏りが消えるとは限りません。「何人か」に加え「誰が含まれ、誰が含まれないか」を見ます。
データを集める方法は、調査・アンケートを読み解く用語8選へ。選択バイアスと交絡は別の問いとして整理できます。
目的から選ぶ、読む順番
- 典型的な値を知りたい:平均・中央値・最頻値を比較する。
- 同じ平均の集団を比べたい:範囲と標準偏差も見る。
- 二つの数字の関係を知りたい:散布図と相関係数を見る。
- 手元の数字から全体を語りたい:標本の集め方を確認する。
確認問題:平均4分と分かれば、中央値も4分?
いいえ。今回の2・3・3・4・8は平均4分、中央値3分です。一方、4・4・4・4・4なら平均も中央値も4分。同じ平均から一つの分布には決まりません。
参考資料
本文の人物・場面・数値は、説明用に作成した架空の例です。
平均・中央値・最頻値
範囲・分散・標準偏差
相関・標本と母集団
同じ値を、異なる縦軸で見る
説明用データはA期50・B期55です。増加は5、A期に対して10%。縦軸の下限を変えても元データは変わりません。
| 期間 | 値 |
|---|---|
| A期 | 50 |
| B期 | 55 |
棒の長さで量を比べるときは0起点が基本です。一方、折れ線で小さな変化を確認するために範囲を絞る場合もあります。省略を明示し、単位・目的・元データを併記することが重要です。
印刷して復習する
用語の違いと確認問題をA4・1ページにまとめました。各解説へのリンクも付いています。