ゴールドストーンの定理は、連続的な大域的対称性が自発的に破れると、低エネルギーの揺らぎが現れることを述べます。相対論的な場の理論では、適切な仮定のもとで質量ゼロの粒子として表されます。
読み:ごーるどすとーんのていり / 英語・別名:Goldstone theorem Nambu–Goldstone ナンブ=ゴールドストーン
法則は同じでも、状態が向きを選ぶ
底が円形の溝になったポテンシャルを想像してください。円周上のどこも同じエネルギーなのに、状態はそのうち一か所を選びます。円の回転に対して法則は対称でも、選ばれた状態は同じには見えません。
円周に沿って少し動くなら、溝を登る必要がありません。選んだ向きをゆっくり変える揺らぎは小さなエネルギーで起こせます。この比喩が、南部=ゴールドストーン・モードの直感を与えます。溝の図は実際の空間の地形ではありません。
連続的・大域的・自発的の三つが大切
連続的とは、角度のように変換を少しずつ変えられることです。二択を入れ替えるだけの離散対称性には、同じ結論をそのまま使えません。自発的とは、法則に非対称な項を加えるのではなく、状態が対称性を失うことです。
大域的対称性と、場所ごとに変換できるゲージ対称性も別です。ゲージ理論ではヒッグス機構などが関わり、同じ見かけの図から観測可能な質量ゼロ粒子が必ず残るとは言えません。適用条件を省くと定理の意味が変わります。
物質の中の揺らぎへ
磁性体のスピン波などでも、対称性と低エネルギー励起の関係が重要です。ただし実際の物質では結晶の異方性や外場によって、理想模型の対称性が明示的に破れている場合があります。
相対論的でない系では、モードの数や波数に対するエネルギーの関係が相対論的な場合と異なり得ます。「壊れた対称性一つに、必ず同じ粒子一つ」と機械的には数えません。何の対称性が、どの状態で破れたかが出発点です。