磁気ヒステリシスとは?同じ磁場でも、磁石は「来た道」を覚えている

磁気ヒステリシスは、強磁性体などの磁化が、現在の外からの磁場だけでなく、それまでに加えた磁場の履歴にも依存する現象です。磁場を増やしたときと減らしたときで、同じ道を戻りません。

読み:じきひすてりしす / 英語・別名:magnetic hysteresis 履歴現象

同じ入力なのに、答えが二つある

磁場を強め、弱め、逆向きにも加えて戻すと、磁化を示すグラフはループになります。ある磁場で磁化を読んでも、どちら側からその値に来たかによって結果が違うのです。単に応答が少し遅れることだけを指す言葉ではありません。

物質の内部には、磁化の方向がそろった磁区があります。磁区の壁の移動や磁化の回転は、欠陥や異方性などの影響を受けます。そのため外場を戻しても、内部状態がただちに元どおりになるとは限りません。

残留磁化と保磁力を分ける

強く磁化した後、外場をゼロにしても残る磁化が残留磁化です。それをゼロへ戻すために必要な逆向きの磁場の尺度が保磁力です。磁気を残す材料と、容易に向きを変えたい材料では、望ましい性質が違います。

永久磁石では磁化が保たれることが役立ちます。一方、交流で磁化を繰り返す鉄心では、履歴に伴うエネルギー損失が問題になります。ただし実際の損失には渦電流など別の要因もあり、すべてをヒステリシスで説明しません。

ループの面積を見るときの注意

B–Hループでは、条件をそろえると面積が一周期あたり単位体積の損失に対応します。磁化Mを縦軸にした図とは式や係数の扱いが異なるので、単に輪の大きさだけを比べず、軸の量と単位を読みます。

温度、最大磁場、変化の速さ、測定方向によってループは変わります。途中まで磁場を振った小さなループと、十分に磁化した主ループも別です。「この材料はこの形」と一枚の図だけで固定しないことが、履歴という言葉を正しく使うこつです。

参考資料