同じ100ポイントでも、もらう喜びより、持っていた分を失う悔しさのほうが強く感じられることがあります。損失回避は、この「増える」と「減る」の非対称性を考える言葉です。
損失回避とは:何を基準に「損」と感じるか
損失回避とは、ある基準からの同じ大きさの変化について、利得より損失を重く評価する傾向です。重要なのは金額や点数そのものに加え、どこを出発点として受け取っているか。持っている状態、期待した結果、提示された条件などが、比較の基準になることがあります。
カーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論では、最終的な財産だけでなく、基準からの利得・損失によって選択を説明します。損失回避はその特徴の一つで、理論全体と同じ意味ではありません。
出典:Kahneman & Tversky(1979)Prospect Theory
同じ終了時の点数でも、受け止め方は違う?
次は仕組みを考えるための作例です。実験結果や、あなたの性格を判定するテストではありません。
| 説明 | 終了時の点数 |
|---|---|
| 80点から20点増えた | 100点 |
| 120点から20点減った | 100点 |
どちらも最後は100点ですが、前者は増加、後者は減少として語られています。後者で悔しさを感じても、それだけで損失回避が証明されたわけではありません。もともとの期待や目標の違いも含めて考える必要があります。
たとえば期間限定の追加機能を使ったあと、元の機能に戻ると「便利さを失った」と感じるかもしれません。一方、追加機能を試す前なら、元の機能で十分と思っていた可能性もあります。何が基準になったかを見る例です。
リスク回避・サンクコスト・保有効果との違い
| 言葉 | 注目すること |
|---|---|
| 損失回避 | 基準から減ることを、増えることより重く評価する |
| リスク回避 | 不確実な結果より、確実な結果を好む |
| サンクコスト効果 | 取り戻せない過去の費用を、今後の判断に持ち込む |
| 保有効果 | 持っているものと、持っていないものの評価の差 |
損を避けたい気持ちが、いつも安全な選択につながるとは限りません。「取り返したい」と不確実な選択をする場面もあります。損失回避とリスク回避を同じ意味で使うと、この違いが見えなくなります。
判断するときの三つの問い
ゲームの企画を続けるか迷っているなら、すでに費やした時間、今後必要な時間、続けることで得たい経験を分けて書きます。「やめると今までが無駄になる」という気持ちと、これから続ける価値は別々に検討できます。
- 何と比べて、損をしたと感じているか。
- 今の状態を持っていなかったとしても、同じ選択をするか。
- 取り戻せない過去と、変えられる将来を分けたか。
「人は必ず損を利益の2倍嫌う」と一律の倍率で説明するのは避けたいところです。感じ方は課題や条件で変わります。この言葉は相手を診断する札ではなく、自分の比較基準を確かめる手がかりです。