言語学は、言葉の正しい使い方を指導するだけの学問ではありません。音素・形態素・語用論など24語を使って、言葉が組み立てられ、意味が伝わる仕組みを観察してみましょう。
各項目は意味・具体例・注意点の順に読めます。例は理解のための作例です。言葉だけで相手や現象を決めつけず、成立する条件も確認してください。
目次
音を分ける
1.音素
ある言語で語の区別に関わる音の単位です。実際の発音には幅があっても、言語の中で同じ単位として扱われることがあります。
具体例:「か」と「た」のように一つの子音の違いで区別が生じると、/k/と/t/の対立に注目できます。
注意点:文字一つが常に音素一つとは限りません。表記と発音を分けて調べます。
2.異音
同じ音素に属すると分析される、具体的な音声の違いです。前後の音や話し方によって実現が変わります。
具体例:英語の/p/は位置によって息の強さが変わりますが、それだけで別の語を区別するわけではありません。
注意点:同じ二つの音でも、別の言語では音素の対立になる場合があります。
3.音節
母音などの響きの中心をもとにまとまる、発音上の単位です。単語の拍子を考えるときの一つの区切りになります。
具体例:日本語の「ほん」は通常一音節と分析されますが、長さを数えるモーラでは二つになります。
注意点:音節の数と仮名の字数は一致しません。分析する言語の構造を確認します。
4.モーラ
音の長さやリズムに関わる単位で、日本語では「拍」とも呼ばれます。撥音や長音の一部も一拍として数えます。
具体例:「きゃく」は「きゃ・く」で二拍、「きゃー」は「きゃ・ー」で二拍です。
注意点:小さい「ゃ」を別の一拍と数えません。音節とモーラは別の観点です。
語を組み立てる
5.形態素
意味や文法的な働きと結び付く、最小のまとまりです。単独で使えるものと、他の要素に付いて働くものがあります。
具体例:「猫たち」を「猫」と複数を表す「たち」に分けると、それぞれの役割を説明できます。
注意点:短く分けられるだけでは不十分で、分けた部分の意味や機能が対応している必要があります。
6.語根
語の中心的な意味を担う部分です。接辞などが付いて、関連する語や文法的な形を作る基盤になります。
具体例:英語のhelpfulとhelplessなら、共通のhelpに注目すると派生関係が分かります。
注意点:語の歴史的な起源と、現在の話者が捉える構造は必ずしも一致しません。
7.接辞
語根や語幹に付いて意味や文法機能を加える要素です。前に付く接頭辞、後ろに付く接尾辞などがあります。
具体例:「再確認」の「再」は、確認をもう一度行う意味を添えます。
注意点:共通の文字があっても、同じ接辞とは限りません。意味の対応も確認します。
8.複合語
複数の語や語根を組み合わせて作る語です。全体の意味が、各部分の単純な足し算からずれる場合もあります。
具体例:「雨雲」は雨と雲の関係を表しますが、「雨男」は雨でできた男性ではありません。
注意点:二つの名詞が隣にあるだけで、いつも一語として扱えるわけではありません。
文と意味を考える
9.統語論
語がどのような構造で結び付き、句や文を作るかを研究します。表面の順番だけでなく、どこがまとまりかに注目します。
具体例:「赤い帽子の子」の「赤い」が帽子を修飾する、とまとまりを確認します。
注意点:文法は学校の正誤規則だけではありません。実際に使われる言語の構造を記述する問いも含みます。
10.句
文の中で一つのまとまりとして働く語の集まりです。名詞句や動詞句など、中心となる要素や機能に応じて分析します。
具体例:「机の上の青い本」を一つの名詞句として、「それ」に置き換えてみます。
注意点:長い文字列なら何でも句になるわけではありません。置換や移動など複数の手がかりを使います。
11.意味論
語や文の意味、意味の組み合わせや関係を研究する分野です。文がどのような状況で真になるかも論点の一つです。
具体例:「全員が来た」と「誰かが来た」は、成立する条件が異なります。
注意点:語用論との境界には議論があります。辞書の語釈を集めるだけの分野ではありません。
12.多義語
一つの語が、関連する複数の意味を持つことです。文脈によってどの意味を使っているかを判断します。
具体例:「明るい部屋」と「明るい性格」では、同じ「明るい」が違う対象に使われます。
注意点:音が同じだけで由来や意味の関係がない同音異義語とは、分けて考えます。境界が曖昧な例もあります。
場面から読み取る
13.語用論
誰が、どの場面で、何のために発話したかを踏まえて意味を考える分野です。文字通りの意味を越えた伝わり方を扱います。
具体例:窓が開いた部屋での「寒いね」が、状況によっては窓を閉めてほしいという依頼になります。
注意点:本当に感想を言っただけかもしれません。文脈からの推測を、確定した本音と混同しないでください。
14.会話の含意
直接には言っていなくても、会話の流れや共有知識から伝わる内容です。文そのものの意味とは区別します。
具体例:誘いへの「明日は早起きなんだ」から、今回は参加しない意向を推測することがあります。
注意点:「でも参加するよ」と続けられるように、推測が取り消される場合があります。
15.直示
発話の場面を手がかりに指す対象が定まる表現です。話し手・場所・時刻などが基準になります。
具体例:「私は明日ここに来る」は、誰がいつどこで言ったかによって内容が変わります。
注意点:文章を転載すると「明日」の基準が失われます。具体的な日付や場所を補うと誤解が減ります。
16.言語相対論
言語の特徴が思考や知覚、記憶などにどのように関わるかという仮説群です。影響の対象や強さを分けて検討します。
具体例:色の名前の区切り方が、色を分類する課題の成績に関わるかを調べます。
注意点:言葉がないことは考えられない、という強い決定論をそのまま支持するものではありません。
覚えた言葉を、自分の例で確かめる
気になった一語を選び、「当てはまる例」と「似ているけれど当てはまらない例」を一つずつ作ると、定義の境界が見えてきます。説明が難しいときは、隣の項目との違いから考えてみましょう。
定義を確認するための資料
- Essentials of Linguistics:Phonemes and Contrast
- Essentials of Linguistics 2:Morphology
- Essentials of Linguistics:Pragmatics
言葉の使い分けクイズ10問
一つずつ選び、答え合わせを押してください。未回答でも説明は読めます。回答の内容は送信しません。