簡単な問題でも、難しい問題でも、Aチームの方が正解率は高い。それなのに、全部まとめるとBチームの方が高くなる。そんな逆転は、本当に起こるのでしょうか。
起こります。数字の計算が間違っているわけでも、どちらかが嘘をついているわけでもありません。割合をまとめるときの「内訳」が、結果を変えるのです。
目次
シンプソンのパラドックスとは
シンプソンのパラドックスは、集団全体で見える関係が、集団を分けて見ると変わったり、逆転したりする統計上の現象です。ここでは分かりやすい「各グループではAが上、全体ではBが上」という例を使います。
定義や数学的な背景はStanford Encyclopedia of Philosophyの解説でも扱われています。まずは自分で計算できる数字で、逆転を確かめましょう。
例:パズル大会の正解率を比べる
次は説明のために作った架空の成績です。AとBは、それぞれ110問に挑戦しました。ただし、挑戦した問題の難易度の内訳が違います。
| 問題 | Aの正解/挑戦 | Aの正解率 | Bの正解/挑戦 | Bの正解率 |
|---|---|---|---|---|
| 簡単 | 9/10 | 90% | 80/100 | 80% |
| 難しい | 30/100 | 30% | 2/10 | 20% |
| 全体 | 39/110 | 約35.5% | 82/110 | 約74.5% |
簡単な問題では90%対80%、難しい問題では30%対20%。どちらもAが10ポイント高くなっています。ところが全体では、Bの約74.5%がAの約35.5%を大きく上回ります。
計算は、Aが(9+30)÷(10+100)、Bが(80+2)÷(100+10)。正解数も挑戦数も足してから割っているので、間違いはありません。
逆転する理由は、難しい問題の割合
Aは110問のうち100問、つまり約91%が難しい問題です。Bは逆に、約91%が簡単な問題です。
同じ難易度の中でAがよく解けても、Aの成績には低い正解率になりやすい難問が多く混ざります。Bの成績には、高い正解率になりやすい簡単な問題が多く混ざります。
全体の正解率は、難易度別の正解率を「挑戦数の割合」で重み付けした平均です。どの数字をどれくらい混ぜるかが違うので、順位も変わります。
90%と30%を、そのまま平均してはいけない
Aの全体を(90%+30%)÷2=60%と計算したくなるかもしれません。でもそれは、簡単な問題と難しい問題の挑戦数が同じ場合の平均です。
実際のAは、簡単10問、難しい100問。30%という数字が、90%の10倍の挑戦数を背負っています。「割合だけ」では、その重さが見えません。
反対に、説明用に両チームが簡単50問・難しい50問に取り組み、表の難易度別正解率をそのまま保つと仮定すれば、Aは60%、Bは50%になります。同じ比率で混ぜれば、この例の逆転はなくなります。これは計算上の比較で、実際に別の問題を解いたときの成績を予言するものではありません。
全体と内訳、どちらが正しい?
どちらの数字も、それぞれの問いには正しく答えています。「今回、挑戦した問題のうち何割に正解したか」なら全体の数字。「同じ難易度で比べるとどうか」なら難易度別の数字です。
「どちらのチームが上手か」を知りたいなら、問題の選び方、同じ難易度でも内容がそろっているか、人数や挑戦回数なども見たいところです。この表だけから、能力の差や原因まで決めることはできません。
また、データは細かく分ければ必ず正しくなるわけでもありません。知りたいことと関係のある分類を選び、なぜその分類で比べるのかを考える必要があります。
割合を見るときに確認すること
- 分母は何か。人数、挑戦回数、表示回数など、数えた単位をそろえる。
- 内訳が違わないか。難易度や利用条件など、結果に関係しそうな構成を見る。
- 比較の目的は何か。全体の実績を見たいのか、同じ条件での違いを見たいのかを決める。
- 率だけでなく件数も見る。1回中1回の100%と、1,000回中1,000回の100%は、同じ情報量ではない。
「正しい数字」が違う印象を作る面白さ
シンプソンのパラドックスが教えてくれるのは、数字を疑えということだけではありません。正しく計算された数字でも、何をまとめたかによって答える問いが変わる、ということです。
割合の見出しを見たら、「何人中?」「どんな内訳?」と一歩だけ戻ってみる。その一歩で、表の奥に隠れていた構造が見えてきます。
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