毎回同じルールで動いているなら、未来も簡単に予測できそうです。ところが、出発点のほんの小さな違いが、後で大きな差になる仕組みがあります。カオス理論は、ルールと予測の難しさが両立する世界を扱います。
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カオスは、ただの「めちゃくちゃ」ではない
数学や物理学でいうカオスは、決まった規則に従う系であっても、初期状態の小さな違いに結果が鋭敏に依存するような振る舞いを指します。複雑に見える動きが、外から毎回ランダムな値を与えられているとは限りません。
鍵になるのは、ルールを知ることと、出発点を完全に知ることの違いです。測定には精度の限界があり、計算で扱う数字にも桁の限界があります。小さな誤差が拡大すれば、遠い先の状態を一点で当てることが難しくなります。
短い式でも、複雑な変化が生まれる
例として、0から1の間の数を使い、次の数を繰り返し計算するルールを考えます。
次の値 = 4 × 今の値 × (1 − 今の値)
これはロジスティック写像の一例です。初期値を0.2000と0.2001にした場合、最初の計算は次のようになります。
| 初期値 | 1回目 | 2回目 |
|---|---|---|
| 0.2000 | 0.640000 | 0.921600 |
| 0.2001 | 0.64023996 | 約0.92133101 |
最初は近い値ですが、繰り返すと違いが複雑に広がります。差は毎回単調に大きくなるとは限りません。近づいたり離れたりしながら、長く同じ道筋をたどることが難しくなります。計算に乱数を使っていなくても、このような動きが生まれるのです。
バタフライ効果は、誤差の広がりを考える比喩
「蝶の羽ばたきが遠くの竜巻を引き起こす」という表現で知られるバタフライ効果は、小さな違いが将来の大きな差につながりうる、というイメージです。特定の蝶が特定の災害の原因だと断定する話ではありません。
ローレンツの1963年の論文Deterministic Nonperiodic Flowは、この分野の代表的な研究です。研究の位置づけは、MITのローレンツ・センターでも紹介されています。
天気の予測が難しい理由の一つ
天気を考えるには、気温、気圧、湿度、風など、広い範囲の状態が必要です。それらを隅々まで無限の精度で測ることはできません。出発点に含まれた小さな違いが、予測する時間を伸ばすにつれて効いてきます。
だからといって、天気予報が無意味になるわけではありません。「明日のこの場所」と「数週間後の同じ場所」では、予測の難しさが違います。また、特定時刻の状態を一点で当てることと、多数の可能性を確率として示すことも別の目標です。
ランダム、不規則、カオスを分けて考える
画面上の点が不規則に動いていても、見た目だけでカオスだとは判断できません。乱数で動かした点、測定の雑音、複数の周期を重ねた動きなども、不規則に見えます。
ゲームで再現性を考える場合も、まず「同じ入力から同じ結果が出るか」を確かめるのと、「わずかな入力の違いが結果にどう影響するか」を確かめるのでは、調べていることが違います。
ルールを知っても、予測には別の条件がいる
カオス理論の面白さは、世界がでたらめだから読めない、という説明では終わらない点にあります。ルールがあっても、測定の精度や予測する期間によって、わかることの範囲が変わる。未来を考えるときは、仕組みと一緒に、どこまでを知りたいのかも考える必要があります。

