全員が使えるものを作るとき、「誰かが作ってくれたら自分も使える」という考えが生まれます。公共財とただ乗りの問題は、利益を受ける人と費用を負担する人が一致しにくい仕組みに注目します。特定の人を怠け者と決めつけるための言葉ではありません。
公共財の二つの性質
典型的な公共財は、費用を払わない人を利用から排除しにくい「非排除性」と、誰かが利用してもほかの人の利用可能性が減りにくい「非競合性」を持ちます。「公共」という名前でも、政府が提供するものすべてがこの条件を満たすわけではありません。
公開された知識は、ある人が読んでも本文が減りません。一方で、アクセス制限を設ければ排除可能になります。道路や施設も混雑すれば利用が競合します。財の分類は、名前だけでなく、利用ルールや混雑の条件も見て判断します。
4人が10点ずつ持っているとする
各人は10点を手元に残すか、全部を共同の箱へ入れるかを同時に選びます。箱の点数は2倍になり、拠出したかに関係なく4人で等分されます。これは公共財ゲームの一つの形を、計算しやすく単純化した作例です。
| 選び方 | 自分の得点 | ほかの人の得点 |
|---|---|---|
| 全員が10点ずつ拠出 | 20 | 各20 |
| ほかの3人だけ拠出、自分は残す | 25 | 各15 |
| 自分だけ拠出 | 5 | 各15 |
| 誰も拠出しない | 10 | 各10 |
自分の10点を拠出すると、全体には20点が戻りますが、自分が受け取る分は5点です。ほかの人の選択を固定すると、拠出せず10点を残す方が、自分の得点は5点多くなります。それでも全員が拠出すれば各20点、誰も拠出しなければ各10点です。個人の追加的な得と、全体の得が食い違います。
コモンズの悲劇とは、何が違う?
公共財ゲームでは、十分な貢献が集まらず、役に立つものが作られないことが問題になります。コモンズの悲劇では、共有の水や空き容量など、使うと他の人の取り分が減る資源が過剰に利用されることが焦点です。
共同マニュアルを誰も作らない問題と、共有サーバーを使い過ぎて容量がなくなる問題では、困り方が異なります。現実には両方が重なりますが、作るための貢献を増やしたいのか、利用量を抑えたいのかによってルールの狙いも変わります。
「他の人に影響すること」と「公共財であること」の区別は、外部性と公共財の違いで整理しています。
協力を増やす方法も、前提を確かめる
担当を決める、作業を小分けにする、貢献を見えるようにする、繰り返し助け合う、費用を共同で負担するなどの案が考えられます。しかし、どんな案も必ず成功するわけではありません。監視や集金に費用がかかる場合も、忙しさや能力の違いで同じ負担が公平でない場合もあります。
また、上の表は自分の点だけを評価する設定です。協力する喜びや他者への配慮を含めれば評価が変わり、現実の人が全員ただ乗りするという予測にはなりません。表を使う目的は、協力を妨げる条件を言葉にし、何を変えれば負担と利益が近づくかを考えることです。
考えてみよう:共同の箱を何倍にすれば拠出が個人にも得?
4人で等分するので、倍率をmとすると自分の10点から戻る分は10m÷4です。mが4を超えると、ほかの人の選択を固定しても拠出の方が得になります。m=4では自分の得点は同じです。人数・倍率・分配ルールが変われば結論も変わります。
参考:Stanford Encyclopedia of Philosophy:Public Goods。本文の数値・日常場面は、特記のない限り説明用の作例です。