宇宙の熱的死は、仕事を取り出すために使える温度差などが乏しくなり、大規模な活動を支えにくくなる遠い未来のシナリオです。宇宙が燃え尽きる瞬間の名前ではなく、熱力学と宇宙の進化を結び付けた考え方です。
読み:うちゅうのねつてきし / 英語・別名:heat death of the universe 熱的死
「熱いまま死ぬ」という意味ではない
熱機関には高温側と低温側が必要です。どこにでも同じようにエネルギーがあるだけでは、都合よく仕事を取り出せません。身近な模型なら、二つの容器の温度差がなくなると、同じ仕組みの機関を動かし続けられなくなる状況が入口になります。
この比喩は宇宙全体を密閉した箱と同一視するものではありません。膨張、重力、ブラックホールなどが関わる宇宙では、平衡やエントロピーを単純な気体以上に慎重に扱う必要があります。
何が続くと、この未来を考えるのか
膨張が続き、星の形成を支える資源や利用できるエネルギー差が長い時間で乏しくなる、といった仮定のもとで考えるシナリオです。星が一斉に消える一つの日時を指す言葉ではありません。異なる天体や物理過程には、異なる時間尺度があります。
宇宙の将来は暗黒エネルギーの性質などに依存します。現在の模型を遠い将来へ延ばす推論と、すでに観測された事実を分けましょう。「熱的死という用語がある」ことは、その結末と時刻が確定していることを意味しません。
ビッグクランチやビッグリップとの違い
ビッグクランチは膨張が収縮へ転じる未来像、ビッグリップは特定の暗黒エネルギーの模型で膨張が結合した構造を引き裂く未来像です。熱的死は、利用できる差や自由エネルギーの問題を中心にするので、名前だけを並べて同じ出来事と考えないようにします。
第二法則を、日常の悲観論にしない
冷蔵庫の内部が冷えたり、生物が秩序ある構造を維持したりすることは、外部とのエネルギーのやり取りを含めれば第二法則と矛盾しません。局所の秩序が増えることと、全体の収支は別です。
宇宙の熱的死は「何をしても無意味」という価値判断の定理ではありません。保存されるエネルギーと、仕事に利用できる条件は同じではない。この区別を宇宙規模へ広げるところに、名前以上の面白さがあります。