エントロピーは「乱雑さ」と説明されることがあります。でも、その言葉だけでは、片づいた机と散らかった机の感想のようになってしまいます。もう一歩進んで、同じ大まかな状態を作る細かな配置が何通りあるか、という視点から考えてみましょう。
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エントロピーは、物理で定義される量
熱力学のエントロピーは、物の状態を表す量の一つです。単位はジュール毎ケルビンです。統計的な見方では、大まかに同じ状態に対応する、細かな状態の数と結びつけて考えられます。OpenStaxの物理学教材でも、微視的な状態から説明されています。
「見た目がごちゃごちゃしているか」という主観的な判定そのものではありません。何を状態として区別し、どんな系を考えているかが必要です。
4枚のコインで、数え方をつかむ
ここでは物理の実験ではなく、組み合わせを理解するための例を使います。区別できる4枚の公平なコインを、それぞれ独立に投げるとします。表と裏の並びは、2×2×2×2=16通りです。
「すべて表」という大まかな状態になる並びは一つです。一方、「表が2枚、裏が2枚」になる並びは六つあります。
表表裏裏 表裏表裏 表裏裏表
裏表表裏 裏表裏表 裏裏表表どの一つの並びも同じ確率でも、六つをまとめた「表2枚・裏2枚」は、一つだけの「全部表」より起きやすくなります。一つの配置の確率と、大まかな状態に含まれる配置の数は違うのです。
「大まかな状態」と「細かな状態」を分ける
コインの例では、表の枚数だけを見た説明が大まかな状態、4枚それぞれの表裏まで指定した説明が細かな状態です。何を詳しく見るかによって、同じ結果の説明が変わります。
物理でも、温度や圧力などで表す状態と、粒子一つ一つの状態を分けて考えます。大まかな状態に対応する微視的な状態の多さは、統計的なエントロピーを理解する入口になります。コインを投げたことから、気体のエントロピーの値をそのまま計算できるわけではありません。
第二法則で大切なのは「どこまで含めるか」
熱力学の第二法則では、物質やエネルギーの出入りがない孤立系のエントロピーは減りません。不可逆な変化では増加します。熱力学のエントロピーの解説も、対象と周囲を合わせた変化を考えることの重要性を示しています。
一部分だけを切り取って、「ここでは減ったから法則に反する」と判断してはいけません。何を対象にし、どこへ熱や仕事が出入りするかを確認する必要があります。
冷蔵庫が冷えるのは、法則に反しない
冷蔵庫は中を冷やしますが、電気を使い、外へ熱を出します。冷蔵庫の中だけを見れば、熱が減っていくように見えても、周囲を含めた仕組みとして働いています。
「中に何が起きたか」と「そのために外で何が起きたか」を合わせて考える例です。法則が禁止しているのは、どこでも一切変化を起こせないということではありません。系の境界を省略すると、説明がおかしくなるのです。
部屋が散らかる理由を、法則だけに任せない
机に物が増えるのは、使った道具を戻さなかった、収納の場所がないなど、行動や設計とも関わります。それを「エントロピーだから」と言っても、具体的な原因は説明できません。
エントロピーのたとえは便利でも、日常のすべての乱雑さを同じ物理量として扱う必要はありません。大まかな状態と細かな配置、対象と周囲。この二つの区別を持つと、「自然は乱雑になる」という一言より、ずっと具体的に考えられます。

