レンツの法則は、電磁誘導によって生じる電流の向きを判断する法則です。誘導電流が作る磁場は、きっかけとなった磁束の変化を妨げる向きになります。「いつでも磁石を反発する」と覚えると、磁石を遠ざける場面で困ってしまいます。
読み:れんつのほうそく / 英語・関連表記:Lenz law Lenz’s law
目次
まず、何が増えたかを決める
磁束は、ある面を通る磁場を面の向きや広さも含めて数える量です。単に磁場の強さだけではありません。コイルを貫く磁束が変わると起電力が生じ、閉じた回路なら条件に応じて電流が流れます。
一様な磁場でも、コイルの面積や向きを変えれば磁束は変化します。逆に、磁場が存在しても磁束が時間変化しなければ、そのことだけで誘導起電力が生まれるわけではありません。
近づけるときと、遠ざけるとき
磁石のN極をコイルへ近づけ、ある向きの磁束が増える場面を考えます。誘導電流は、その増加を抑える向きの磁場を作ります。同じ磁石を遠ざけたときには磁束が減るので、減少を埋める向きになります。
同じN極なのに、動かす方向で電流の向きは反転します。大事なのは磁場そのものへの反抗ではなく、増える・減るという変化への応答です。向きを描くときは、どちら側からコイルを見ているかも固定します。
マイナス符号には、向きの意味がある
ファラデーの法則は、巻数Nのコイルなら起電力を−N dΦ/dtと表します。マイナスは、面の向きと回路を回る向きを一貫して決めたときの関係を示します。起電力の大きさがいつも負、という意味ではありません。
もし変化をさらに強める方向へ際限なく誘導が起きるなら、外から仕事をしなくても運動が増幅されるような矛盾を招きます。レンツの法則は、エネルギーの受け渡しを追う際にも役立ちます。
身近な制動へつながる
磁石と導体の相対運動が、導体内に電流を作り、運動を妨げる力へつながることがあります。渦電流ブレーキの入口になる考え方です。ただし回路の抵抗や形状で電流の量は変わります。向きを決める法則だけで、止まる距離まで決まるわけではありません。
磁場に逆らう?変化に逆らう?
| 場面 | 元の磁束の変化 | 誘導磁場の向き |
|---|---|---|
| 上向き磁束が増加 | 増える | 下向きで増加を抑える |
| 上向き磁束が減少 | 減る | 上向きで減少を補う |
| 磁束が一定 | 変化なし | この変化に由来する起電力は0 |
表は面の向きと回路の条件を固定した模型です。一定の磁束でも、別の電源で電流が流れている可能性まで否定するものではありません。