練習アプリを使った人の平均点が高かった。その結果だけで、アプリが点数を上げたと言えるでしょうか。もともと経験が多い人ほどアプリを使っていたなら、経験の影響が混ざっているかもしれません。
交絡(こうらく)は、調べたい原因と結果の関係に、別の要因の影響が混ざって因果効果を捉えにくくなることです。その別の要因を交絡因子と呼びます。典型例は、原因候補と結果の両方に影響する共通の要因です。
目次
アプリを使った人の平均点は高い。でも……
架空の100人を、アプリを使った50人と使わなかった50人に分けます。経験者は平均80点、初心者は平均50点で、各層ではアプリ利用の有無による平均点の差がない例を作ります。
| 経験 | アプリ利用あり | アプリ利用なし |
|---|---|---|
| 経験者 | 40人、平均80点 | 10人、平均80点 |
| 初心者 | 10人、平均50点 | 40人、平均50点 |
| 全体 | 50人、平均74点 | 50人、平均56点 |
利用ありは(40×80+10×50)÷50=74点、利用なしは(10×80+40×50)÷50=56点。全体では18点差ですが、経験別では差がありません。経験者が利用ありの集団へ多く含まれることが、全体の比較に混ざっています。
この作例は「全体で差があれば、必ず交絡だ」という意味ではありません。現実のデータでは、アプリの効果と交絡の両方が存在する場合もあります。差が何から生まれたかを、追加の情報と設計で切り分けます。
共通原因として図を読む
この例で考えている仮説は、「経験 → アプリを選ぶ」と「経験 → 得点」の二本の矢印です。アプリ利用と得点が一緒に変わる理由として、アプリの効果以外に、経験という共通の背景があるわけです。
単に二つの数字と相関する変数を見つけただけでは、交絡因子と確定しません。その変数がいつ生じ、何に影響するかを考える必要があります。相関係数は関連を要約しますが、この矢印の向きを自動的に教える指標ではありません。
経験別に比べると、何が分かる?
上の表では、経験者同士、初心者同士を比べることで、経験の構成比の違いをいったん取り除けます。両群が経験者50%・初心者50%だったとする重み付きの平均なら、どちらも65点です。
ただし、その比較で十分かは別問題です。「経験者」の中の経験年数、練習時間、教材などに差が残れば、まだ別の説明が考えられます。集団を分ければ必ず正しいのではなく、問いに関係する条件を適切に扱うことが重要です。集計と条件別の関係が変わる話はシンプソンのパラドックスともつながります。
無作為抽出と無作為割付は別の操作
無作為抽出は、調べる人を母集団から選ぶ方法です。無作為割付は、参加者をアプリあり・なしなどの条件へ偶然で振り分ける方法です。前者は主に全体への一般化、後者は主に条件間の因果比較に関わります。
無作為割付では、既知・未知の背景要因が系統的に片方へ集まることを防ぎやすくなります。ただし、有限人数では偶然の偏りがあり、割付後の脱落や条件の不遵守も起こり得ます。実施できるか、参加者への説明や負担は適切かも検討します。
何でも調整すればよいわけではない
アプリが練習時間を増やし、それが得点を上げる、という経路を考えます。利用後の練習時間を調整すると、知りたかったアプリの総合的な効果の一部を取り除いてしまう可能性があります。練習時間は、この仮説では効果を伝える途中の要因です。
また、原因と結果に関係する選別条件へ絞ることで、新たな偏りが生じる場合もあります。測れた変数を全部入れるより、比較したい効果と時間の順序を先に決めます。交絡への対処は、計算の操作だけでは完結しません。
交絡と選択バイアスをどう見分ける?
選択バイアスでは、誰がデータに入るか・残るかに注目します。交絡では、原因候補と結果の関係に別の要因の影響が混ざる点に注目します。同じ研究で両方が起きることもあり、完全に無関係な問題ではありません。
まず「誰を見ているか」を確かめ、次に「何と何を、どの条件で比べたか」を確かめる。この二段階に分けると、調査の問題点を具体的に説明しやすくなります。
確認問題:利用者の得点が高いと分かったら、アプリの効果はゼロ?
それも言えません。全体の差だけでは因果効果を特定できない、ということです。効果がある・ないの両方を早く決めず、利用前の状態、比較群、割付方法などを追加で確認します。
参考資料
本文の人数・割合・場面は、説明用に作成した架空の例です。